96部分:動きはじめた時その七
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動きはじめた時その七
「何だ?」
埃を払いその文を開いた。読んだ。その内容は驚くべきものだった。
「まさか、あの話が真実だったとは・・・・・・」
暗い影がサイアスの端正な顔を覆っていく。共にクルト王子を暗殺し各地に反乱を起こさせたランゴバルト、レプトール両公を反乱の罪を被せたシグルド公子に始末させ残った公子をバーハラへ誘い出し反逆者として倒すーーー。以前より噂になっていた事ではある。だが信じてはいなかった。しかしこの文は計画について実に細かい部分まで書かれており皇帝アルヴィスや帝国軍の主立った将達、当然ながらサイアスの両親のものもある。サインがあった。それは本人達の筆に間違い無かった。
「・・・・・・まさか・・・・・・・・・」
信じたくはなかった。だがその軍師としての鋭い直感がこれが真実であると言っていた。恐ろしいものを見てしまったと感じた。
バーハラ城内にある邸宅に戻った。帝国の二将軍の家だけあって豪奢な造りである。サイアスはこの家で生まれ育った。
夜になっても寝付けなかった。法衣とマントのまま机に向かい灯を見ながら考え込んでいる。ガラス窓の外を見た。
月が淡い黄の光を放ち夜空を照らしている。まるで彼をその光の下に誘っているかのようだった。
「外に出てみるか」
サイアスは部屋を出た。夜の廊下を一人歩いている。両親の部屋の前に来た。
部屋の前で立ち止まった。木造の扉を見る。
「父上、母上・・・・・・」
帝国の魔道騎士団長である父と親衛隊長である母をいつも敬愛していたし二人の子である事を誇りとしていた。戦場では勇敢な父、冷徹な母は家では優しい親でありサイアスは暖かい家庭で育てられた。サイアスの魔力と司祭、軍師としての資質を見抜いた二人の教育の下彼はその才を開花させ若くしてハイプリーストに任じられ宮廷司祭として、軍師として名声を得た。今の彼があるのは全て両親あってのことだった。
部屋の前から立ち去り外へ出ようとした。不意に部屋の中から声がした。
「?」
不意に気になった。耳をそばだてた。
“まずい事になったぞ。アルスターとレンスターが反乱軍の手に陥ちた”
父の声がする。何やら深刻な声色だ。
“けれどフリージにはまだ彼等以上の軍とイシュタル王女がいるわ。反乱軍もそう簡単には打ち破れないわよ”
母の声がした。母の声は父のそれよりも幾分か明るいようだ。
“だが反乱軍は強い。万が一フリージ軍に破れる事になったら彼等はイザークとレンスターを手中に収め帝国に匹敵する勢力を形成する事になるぞ”
“もしそうなったらトラキアの動きも気になるわね。トラバント王、この機にどう利を得るつもりか・・・・・・”
“今頃狸の皮算用でもしているのだろう。しかしフリージが破れると本当にまずいな”
“ええ。コノート
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