丁寧に、私を脱がしていく。
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彼には言えない。
会って2時間の人とセックスしたなんて。
名前も知らない人とセックスしたなんて。
でも間違ったことはしてない。
……………………………
50年に一度という台風は、16人もの負傷者を出したそうだ。
一歩間違えば、私も怪我をするところだった。ベランダの大きな窓が割れたのだ。
停電の闇の中、スマホ画面の光だけをたよりに、また何か飛んでこないかとビクビクしながら、とにかく雨戸は閉めた。
台風を甘くみてた。
賃貸マンションだから、大家さんが復旧してくれるんだろうけど、
雨戸を閉めなかったのは私の落ち度だ。申し訳なかった。
◆
翌朝は快晴。
でも停電継続中。ラジオがあってよかった。
彼からは、もちろん連絡があった。お互い無事でよかったねーと言いながら、部屋の惨状は伝えなかった。
交通機関が麻痺してるのに、彼を呼ぶのは気が引けた。
朝9時。買い置きのパンで朝食を済ませ、復旧作業開始!
◆◆
その“彼”と会ったのは、ゴミ集積所だった。
ガラスの破片を新聞紙にくるむ とかさばった。両手に袋を持って行くと、ジャージ姿の彼が、ゴミ袋を整理していた。
そもそも今日は土曜日で収集日ではないが、こんな時だから、住民が勝手に置いていったのだ。……他人のこと言えた義理じゃないけど。
「スペース空きましたよ」
「ありがとうございます」
訊けば、職員ではなく、純然たるボランティアだと言う。
未明に、この近くにある恋人のアパートに駆けつけたが、被害が出なかったので帰る途中、この集積所が気になったのだと言う。
彼女の部屋に何時間いたのか、どうやって不安を和らげてやったか知らないが、正直に話した彼を信頼したのは当然だった。
「私の彼は来てくれないんです」
ちょっと嘘を混ぜた。
◆
丁寧に、私を脱がしていく。
優しい人だった。
◆
大きなゴミ袋を二つも持ってきた私を見て、何か手伝うことありませんか?
と訊いてくれたのだ。
部屋に招いた二人目の男性となった彼は、窓の応急措置をしてくれた。
万一のために持ってきていたガムテープで。
細かいガラス片もガムテープで集め取り、
とりあえず寝室は使えるようになった。
部屋を一瞥し、「とりあえず大丈夫ですね。どうぞお気をつけて」と言ってドアを出ようとする彼に、
「待って」と叫び、私は急いで上を脱いだ。
昨夜から下着はつけてなかった。
◆
据え膳食わぬは……なんて人じゃなかった。私が見込んだとおりだった。
急いで靴を履き、ドアを飛び出す彼を、裸足で半裸の私が追う。
靴をうまく履けてなくてスピードが出ず、マンションの玄関を出る前に、“痴女”に捕まってしまった。
お互いに恋人がいる
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