89部分:雷神その五
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雷神その五
イシュタルは一騎当千の者達に囲まれながらもひけは取らない。いや、むしろ解放軍の将達の方が気おされていた。
「あれがイシュタル、何て気・・・・・・・・・」
フェミナが呟く。槍を構えているが魔力に押され動けない。
「イシュトーより遥かに凄い・・・・・・。まるで化け物だ・・・・・・」
スカサハも大剣を両手に握ったまま進めない。どの者もイシュタルのあまりの力の前に身動きが取れなかった。
(このままでは殺られる・・・・・・)
皆そう感じていた。だがティニーだけは恐れるふうもなくただイシュタルを見ていた。
イシュタルもティニーの方へ身体を向けにこり、と微笑んだ。姉が妹に対するような優しい笑みだった。
「ふふふ」
笑いながらティニーに歩み寄って来る。今までの圧倒的な気が緩んでいく。
「今だっ!」
一同が構えを取り直しイシュタルに剣や弓を向け魔法を放とうとする。特にアーサー達は二人の間に入りティニーを護ろうとする。だが彼女は前に出た。
「大丈夫です」
そう言って微笑んだ。イシュタルがもう手が届くまでに近付いている。
イシュタルはティニーの瞳を見た。その輝きを見て再び微笑んだ。
「ティニー・・・・・・」
両手でティニーを抱き締めた。よく見るとハイヒールの高さを引けばティニーより少し高い位だ。小柄である。
「いつもオドオドして自信無さげだった貴女が父上と向かい合うなんて・・・・・・。ほんの少しの間に成長したわね」
「姉様・・・・・・」
ティニーもイシュタルの背に手を回す。二人は抱擁し合ったまま話を続ける。
「何時かこの日が来ると思ってたわ。弱々しい幼虫だった貴女が美しい蝶になる日が。遂にその日が来たのね」
ティニーから手を離すと右手に付けてあった腕輪を外した。
「シールドリングよ。その日が着たら貴女に手渡すつもりだったの」
ティニーは小さい両手でその腕輪を受け取った。
「姉様・・・・・・。有り難うございます」
「そしてもう一つ」
イシュタルは再びティニーを抱き締めた。そして耳元に口を近付けた。
「いっ」
緩くティニーの耳を噛んだ。
「そして今から貴女と私は敵同士になる。私が今した事、解かるでしょう」
「フリージに伝わる死合いの申し込み・・・・・・」
「そう、そしてその返礼は?」
ティニーもイシュタルを抱き締め彼女の耳を噛んだ。
「あっ」
ティニーは耳を噛むとイシュタルから離れた。イシュタルはティニーから離れだした。
「有り難う、私の誘いに応じてくれて。今度会う時私は私の全力をもって貴女と、貴女もお友達と死合うわ」
「私も、私の持つ力を全て出して姉様と・・・・・・」
イシュタルは優しくティニーに微笑んだ。
「楽しみにしているわ、ティニー。私の可愛い
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