第一話 夢の世界その三
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「それは僕も思ったわ」
「凄いやろ」
「ああ、生活費も育児も頑張るんや」
「そうやってくで」
「そんで僕はや」
「落語家かいな」
「落語心中以上の落語家になったるわ」
こうまで言うのだった。
「あのアニメのお師匠さん以上にな」
「落語のアニメもあるんやな」
「そや、やったるで」
「落語で飯食うのは大変らしいけどな」
「そやな、けどやったるで」
「ほな自分も頑張れ」
「そうするわ」
二人でこうした話をしていた、受験生なのでそうした話を冗談交じりにしていた。そしてその二人のところにだ。
髪は黒の首の先の付け根のところで切り揃えたショートヘアで細い眉に大きな黒い目、小さな唇と楚々とした顔立ちをした少女が来た。背は一六〇程でグレーの制服のミニスカートから白い脚が見えている。靴下は白だ。上は濃紺のブレザーで緑のネクタイに白のブラウスだ。すらりとしたスタイルだ。
その彼女がだ、二人のところに来て声をかけてきた。
「受験の話?」
「そや」
芥川が少女に微笑んで答えた。
「どの学部受けて将来どうするか」
「えらい具体的な話しててんね」
「僕は落語家になるってな」
「芥川君それよお言うてるね」
「実際になるつもりやさかいな」
だからだとだ、芥川は笑って答えた。
「それで文学部に行ってや」
「古典落語勉強して」
「プロの落語家になるで」
「そこまで考えてるんやな」
「そや」
「それで紫ちゃんはやっぱり」
中里が少女の名を呼んだ、下の名前は綾乃という。
「巫女さんかいな」
「いや、巫女さんやなくてや」
「神社の奥さんっていうか」
「私神社の娘やから」
それでとだ、綾乃は中里に微笑んで答えた。
「宗教学部に入って」
「それで神道のこと勉強して」
「それでな」
そのうえでとだ、綾乃も進路のことを話した。
「巫女さんはリアルでしてるけど」
「将来はやな」
「神社はお兄ちゃんが継いで」
そしてというのだ。
「私は多分他の神社にな」
「お嫁さんに入るんかいな」
「そうなるんちゃうか」
「それ決まってるんかいな」
「多分」
そうだというのだった。
「お父さんもお母さんも好きにしたらええっていうけど神社好きやし」
「女の人は神主さんになれへんの」
「どうやろな」
綾乃は中里の問いに首を傾げさせて返した。
「一体」
「何かよおわからん返事やな」
「そこは私もまだ知らんから」
「そやねんな」
「そや、けれどな」
「宗教学部で勉強してかいな」
「神社にいたいわ」
就職してもというのだ。
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