88部分:雷神その四
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雷神その四
「先にコノートへ行け。わしはこの娘に用がある」
「ですが・・・・・・」
「案ずるな、わしにはトゥールハンマーがある。それとも王の命に逆らうつもりか?」
王の強い口調と眼力に側近達も困惑した表情で顔を見合わせていたがやがて頷き合った。
「解かりました。それではお先に」
「うむ、コノートで会おうぞ」
彼等はフリージの敬礼をしコノートへ向けて去って行った。彼等の姿が見えなくなると王は再び姪の方へ向き直った。
「どうやらシアルフィの方へ寝返った様だな」
「・・・・・・・・・」
ティニーはまだ一言も発しない。ただ叔父の眼を見ている。
「育ててやった恩を仇で返しおって。して何だ?まさかわしに降れとでもいうのか?」
「・・・・・・・・・はい」
初めて言葉を発した。
「フン、世迷言を。誰がそのような戯言に乗るか」
王はそう言うと両腕をゆっくりと交差させ下ろした。緑の雷光が次第に球となり王の身体を包んでいく。
「我がフリージに背く者は誰であろうと許さぬ。例えそれが身内の者であってもな。せめてこのトゥールハンマーで葬ってやろう」
雷球が大きくなっていく。解放軍の将達が構えを取り一斉攻撃に移ろうとする。その時だった。
「お止め下さい、父上」
不意に空から声がした。トゥールハンマーの雷球が打ち消される。
「トゥールハンマーが打ち消されただと!?それ程の魔力を持つ者なんて・・・・・・」
アミッドが驚きの声をあげる。
「このユグドラルでも数える程しかいない・・・・・・。そしてこのレンスターにいるとしたら・・・・・・」
リンダが顔を青くさせ空を見た。天馬も竜も怯えきった顔で前を見て動かない。
上空に魔法陣が現われた。その上に次第に淡い青緑の光と共に人が現われる。それは女のものであった。
「間違い無い・・・・・・」
ディーンが怯え動けなくなった飛竜を制しながら言った。
「マンスターから動けないんじゃ・・・・・・」
強気なラドネイが声を震わせている。見れば幾多の死闘をくぐり抜けてきた血気盛んな若き将達が顔を青くさせている。そしてティニーを除いて一斉に言った。
「雷神イシュタル!」
天に浮かぶ魔法陣の上に長い銀髪を横に束ね黒く大きな瞳と白く透き通る肌を持つ美しい少女がいた。黒く胸の部分が大きく開き右に大きくスリットの入った黒い絹の服を着、太腿の途中までのストッキングを着けている。肩からは紅のマントを羽織り、ルビーの耳飾りをし黒のハイヒールを履いている。ブルーム王の娘にしてトゥールハンマーの継承者、イシュタル王女である。
イシュタルは解放軍の将達を一瞥するとゆっくりと降りてきた。地に降り立つと顔を顰めている父と向かい合った。
「王たる者が意固地になってはなりません。ここは私にお任せ下さ
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