暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八話 ポイント・オブ・ノーリターン
[4/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
「ヴァレンシュタイン少佐、ミハマ中尉、貴官達にはヴァンフリート4=2にある後方基地に行ってもらう」
その瞬間、ヴァレンシュタイン少佐の表情が強張りました。やはり少佐は前線に出るのを望んでいません。何時かは帝国に戻るためでしょう。
「最近、帝国軍がヴァンフリート星系の近辺に哨戒部隊を頻繁に出しているそうだ。後方基地を造って以来、我が軍の艦艇もヴァンフリート星系に頻繁に出入りしている。基地があるとは分かっていないだろうが我々がヴァンフリート星系を基点に何らかの軍事行動を起そうと考えている、帝国軍がそう思ったとしても不思議ではない」
少佐は何も言わずに黙ってキャゼルヌ大佐の言葉を聞いています。表情を強張らせたままです。
「基地司令官はシンクレア・セレブレッゼ中将だが、中将は後方支援は他者に劣るものではないが実戦の経験は殆ど無い。そこで戦闘になったときのために有能な作戦参謀が欲しいと言ってきた」
つまりその作戦参謀が少佐と私?
「基地には既に頼りになる防御指揮官達がいるのでは有りませんか?」
ヴァレンシュタイン少佐の問いかけにキャゼルヌ大佐は首を横に振りました。
「確かに居るが彼らは実戦経験の無いセレブレッゼ中将に必ずしも心服していない。中将自身がそれを感じている」
つまり中将を助け、防御指揮官達を命令に従わせるのが仕事? それを少佐に? ちょっと階級が低すぎない?
「小官は未だ少佐です。そのような調整役は難しいと思いますが?」
「貴官は同盟の英雄だ。防御指揮官達も貴官を無視できるとは思えんな」
少佐は黙って唇を噛み締めています。ややあってゆっくりと話し始めました。
「小官は身体が丈夫では有りません。戦闘ともなれば肉体的に無理をしなければならないときも有るでしょう。それが出来ない、返って周囲に迷惑をかけかねません、そう思ったから補給担当の士官になったのです」
ヴァレンシュタイン少佐の言うとおり、少佐は決して丈夫なほうではありません。月に一度ぐらいは体調不良で仕事を休んでいます。
「他に人が居ないのだ、少佐。後方支援の能力、そして作戦参謀としての能力、その両方を高いレベルで備えた士官となるとな……。セレブレッゼ中将はそういう人物を望んでいる。それにこれは打診ではない、決定だ。シトレ本部長が推薦しトリューニヒト国防委員長も賛成した。拒否は出来ない」
「……」
「少佐、貴官はこれを意趣返しだと思っているかもしれない。だがそれは誤解だ。確かにあの時我々は貴官に対して腹を立てた。だが怒っていたのは貴官も同様だろう、どれほどスパイではないと言っても我々は信じなかったのだからな」
キャゼルヌ大佐の話を少佐は黙って聞いています。
「普通の人間なら腹は立っても我慢して耐えるだけだろう。だが貴官には反撃するだけの
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ