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フロンティアを駆け抜けて
賽は投げられた!
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決める。面倒くさそうにしつつダイバは答えた。梅と昆布のお茶らしいが、味が想像できなかったジェムは自分も注文してみる。すぐに用意されたそれを少し飲んで見ると、今まで味わったことのない酸味と渋みが口の中に広がった。思わず吹き出してしまいそうになったけど、何とか飲み込む。

「しゅ、すっぱっ……」
「馬鹿じゃないの?」
「ば、馬鹿じゃないわ! ちょっとびっくりしただけよ!」

 ダイバは目玉焼きをご飯の上に乗せて、黄身を潰して半熟のそれをご飯にかき混ぜ、醤油をかけて食べ始める。時折平然と梅こぶ茶を飲みながらだ。ダイバはこの味にすっかり慣れているようだった。ジェムは一旦牛乳を飲んで口の中をリセットさせた後、昨日のことについて話す。

「私はね、昨日お母様がどんな思いで私を育ててくれたのかとか、お父様がチャンピオンのお仕事を続けるためにどんなことをしてるのかとか色々お話ししたんだけど……ダイバ君は、何を話してたの?」

 直接焦っている理由を聞いても答えてくれないので、まずそこから聞いてみる。話の内容から彼の焦りの内容を察せるかもしれないからだ。

「別に……フロンティアのバーチャルシステムがちゃんと機能してるかどうか聞かれただけ」
「それだけ? 本当に?」

 ダイバの父親はフロンティアのオーナーなのだから、ダイバに聞かなくてもそんなことはわかりそうなものだった。何か隠しているんじゃないかと訝しむジェムの目線から顔を反らすように帽子の鍔を抑えてダイバは言う。

「……このフロンティアのバーチャルシステムを鍛えたのは僕とグランパなんだよ。だからパパより僕の方が詳しいんだ。それだけ」
「グランパ? えっと……」
「祖父。昨日椅子に乗って空を飛んでたあの人」
「お爺様と一緒に……そっか、だからあんなにバーチャルもダイバ君も強いんだね。自分のお父様より詳しいことがあるなんてすごいわ!」
 
 ジェムも二回ほど負けたバーチャルを作ったという言葉をジェムは素直に受け止めてそう褒める。ジェムが自分でも驚くほど、昨日までの自分がダイバより弱いことへの怯えはなくなっていた。自分の未熟さと弱さを、恐れずに受け止めることが出来たからだろう。

「何、急に。僕がおかしくなったんじゃなくて君が変になったんじゃないの?」
「ふふ、そうなのかも。でも、じゃあダイバ君はお父様に頼りにされてるのね」
「……は?」
「だってそうでしょ? わざわざダイバ君を呼んでまで聞くってことは、ちゃんと確認して安心したかったってことだと思うし」
「……」

 何気なく、ジェムは思ったことを言っただけだった。それにダイバは何かはっとしたように顔を上げて黙考する。

「まさか。パパが僕を頼るなんてあり得ない。……
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