二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第17話 太ましき町人
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に富んだ緑のじゅうたんが、三人にその栄誉を見せつけていた。
「雨少なそうなのに、こんなに畑があるって凄いなー」
ティアが感想を述べる。
このあたりは大陸中央に近く、かなり内陸に位置している。そのため、降水量が多いわけではない。
そして、右手側に見える巨大な海……としか見えないような巨大な湖。その湖水も淡水ではなく塩水であり、そのまま農業用水にすることはできない。
ティアの言うとおり、一見、農業には不向きな地域に見える。
実際、歴史上でも永らく本格的な農業は行われていなかったとされている。
シドウには、修行時代に師匠から教わった知識がある。
なぜ今この地域が大陸一の農地になっているのか、その理由は把握していた。
「この畑を整備させたのは、魔王軍なんだ」
「え? そうなんだ?」
驚くティア。
アランは知識があったようで、わずかにうなずいた。
マーシアは、魔王軍に占領されていた町だった。
一見すると農業が困難に見えてしまうこの地域だが、湖に流れ込む川がいくつかあるほか、地下水もきちんと存在している。
その潜在能力に目を付けていたのは、人間ではなく、魔王軍だった。
魔王軍はこの町に突然侵攻すると、瞬く間に占領下に置いた。
そして町の人間を使って大規模な水路を造り、井戸を大量に掘り、灌漑農業をおこなえる環境を整備した。
それまで放牧や湖での漁業のみで細々と暮らしていたマーシアの町は、一転、広大な農地と大陸一の農業インフラを手にすることになったのである。
その後大魔王が倒され、この町も勇者パーティによってめでたく解放された。
マーシアは『開放の町』という称号で呼ばれるようになったが、魔王軍の指揮で出来上がった農地や、占領下で整ったインフラなどは、現在もそのまま残っている。
皮肉なことに、侵略されたことで豊かな町となってしまったのだ。
「でもシドウ、なんで魔王軍はわざわざそんなことしたんだろうね?」
「アンデッドを除くと、モンスターも自然の生物だから、食べないと生きていけないからね。グレブド・ヘルは気候が厳しいせいで食糧の確保がなかなか難しかったんだ。魔王城も食糧事情が結構厳しかったって、母さんから聞いたことがある。農地を整備すれば、この町だけで魔王城を食わせられるって思ったのかもしれない」
「へー、そうだったんだ……」
「ふむふむ。それは面白い話ですね」
* * *
マーシアの町は、町ごとぐるりと、淡い土色の壁に囲まれていた。
その入り口のところまで、三人は来た。
入口には警備の兵士が一人……。
――!?
立っていたのは、ブクブクに太っている中年の兵士
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