二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第17話 太ましき町人
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辺りの景色は、イストポート付近に比べるとはるかに緑に乏しく、荒涼としていた。
そしてその中を通る、整備されていない粗い道。
シドウとティア、そしてアランの三人は、ひたすらその道の上を北北西の方向に歩いていた。
三人の左手方向の彼方には、高くそびえたつ巨大な断崖絶壁が、白く霞んでうっすらと見えている。
まるで、天から降りている巨大なカーテン――。
そのカーテンの上は、『グレブド・ヘル』と呼ばれている高地である。
大陸の中央近くに位置するその高地は、周囲を断崖絶壁で囲まれ、外の世界からほぼ隔離された地となっている。
元々は人型モンスターが生息していた地域であり、小さな集落を点々と作ってこじんまり暮らしていた。
だが、大魔王が登場して魔王軍が結成されると、それは激変した。
本拠地として禍々しい巨大な魔王城が建てられ、人型モンスターの他にも大陸の有力モンスターが次々と入城。魔の地と化した。
現在は大魔王が死亡し、魔王軍も消滅しているため、人型モンスターの残党が細々と生活を営んでいるとされている。
「ティア、疲れてない?」
「ん? わたしは大丈夫だよ?」
「それならいいけど……」
シドウは念のために右隣のティアに声をかけたのだが、やはり彼女は体力的にまったく問題ない様子だ。
「私のことは心配してくださらないのですか? シドウくん」
今度は左隣からシドウに対し、そのような声がかけられた。
「あっ、すみません。でもアランさん、魔法使いなのに体力ありそうですよね」
「きちんと鍛えていますから。これくらいの歩きはまったく問題ありません。単にシドウくんに心配してほしかっただけです」
「……そうですか」
さすがにマントをサッと取って筋肉を見せつけるなどはしてこなかったが、アランの体格には弱々しい感じがまったくない。
太くは見えないが、おそらくそれなりにしっかりした体をしているのだろう。
背もかなり高めで、言われなければ魔法使いであることに誰も気づかない外見である。
「俺が二人を乗せて、堂々と空を飛べると楽なんですけど」
「そうもいかないでしょ。これから行くマーシアの人に目撃されたら面倒なことになるだろうし。ねえ? アラン」
シドウには歩きよりも楽で速い移動手段があるため、ついぼやいてしまったのだが、すぐにティアから突っ込みが入った。
同意を求められたアランは、ティアが示した理由の他に、もう一つ付け加えた。
「そうですね。それに……シドウくんの背中に乗る資格があるのは、ティアさんだけなのではないでしょうか?」
「え。何? 資格って」
わけがわからないティアは、当然聞き返す。
「ドラゴンという生物は、相当信頼
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