「手を組んで、上に突き上げる。ちょっと腰をひねって」
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に見とれてしまった。
脱いでよかった。描いてもらってよかった。心からそう思った。
「私、美大に行くつもり」
美奈子は言う。
うん、行けるよ、この腕なら。
「で、私、あの3人のなかで、一番気に入ったの。ぜひ、全身を描きたいんだけど」
え? 今、なんか言った?
「今日の放課後、家に来てよ。あ、パンツは穿いてていいから」
──────────
着いちゃった。
連れられてきちゃった。
美奈子の家は普通だった。
台所にいたお母さんに挨拶して、二階の美奈子の部屋に入る。まあ、普通の部屋だった。
「緊張してるの? 女同士なのに」
緊張しないほうがおかしい。
「私が美大目指していることは、親も知ってるよ。こんな本も買ってくれる」
彼女が本棚から取り出した大型本──表紙が裸の女性の写真。
中身は、すべて全裸の女性の写真だった。ヌード・ポーズ・ブック。その名の通り、ありとあらゆるポーズをとっていた。
四つん這いなんて、着衣でも恥ずかしいのに、このお姉さん、ハダカで、平気なんだ。
健康で可愛いおっぱい、なんて自負が失われてしまう。
ダメだよ、中学生がこんな本持ってちゃあ。
「大丈夫、パンツは穿いてていいから」
また言った。
パンツは穿いてていい。
つまり、パンツ以外は身につけちゃいけない。
ともかく私は、たいして親しくもないクラスメイトの部屋で、ショーツ一枚でベッドの上にいた。
美奈子は、間違いなく芸術家だ。
私のヌードを正しく見ている。
落ち着いてるのは、同性だから、というわけではない。
仮に、モデルが裸の男性でも、普通に観察するに違いない。
彼女の筆は速い。
速いから、私は、ポーズを次々に変えなければならなかった。
いつの間にか、
私は床に立つ裸婦になっていた。
普通は立ちポーズ→寝ポーズとなりそうなものだが、これも美奈子の感性なのか。
相変わらず、ショーツ一枚で、「休め」のポーズで立つ私。
なにげないポーズほど、美奈子の針は振れるらしい。
─────────
「手を組んで、上に突き上げる。ちょっと腰をひねって」
言われた通りにする。
コンテが走る。
「そのまま、後ろを向いて」
回れ、右。
「いい。すごくいい。……でも、これだけはパンツが無いほうがいい」
あー。
うすうす予感はしていた。
美奈子が本当の芸術家なら、どこまでも純粋な表現を追求するはずで……。
コンテは動かない。
わかったよ。
私は、ショーツに手をかけ、一気に降ろした。
「ありがとう、詩織」
コンテが走る音がした。
◆
「お疲れ様」
美奈子
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