二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第16話 奇妙な同乗者
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シドウの髪の毛を触るのが趣味なの?」
「俺もそれは疑問です……」
頭を撫でられているシドウは、ティアの疑問に便乗する。
「このモフモフな亜麻色の髪は、いくら触っても飽きませんよ」
「……」
「そしてセンス最悪な服も、顔や髪の魅力を十二分に引き立てています。狙ってやっているのであれば見事なものです」
「そ、そうですか。別に狙っていませんけど。変身で頻繁に破っているので安物にしているだけで」
アランは、シドウが変身することを知っていた。そして「おそらくハーフドラゴンであろう」という予想もすでに立てていた。
いったいなぜ? と聞いたところ、 どうもこの赤毛の青年は冒険者登録もしており、シドウがシーサーペントと戦う現場にも途中から居合わせていたらしい。
変身するところも目の前で見ていたとのこと。
アランは首を巻いていた右腕を外すと、今度は両手を使ってシドウの上体を無理矢理後ろにひねり、目を覗きこもうとした。
逃れようとしたシドウだったが、頬をしっかりと掴まれてしまい、途中で抵抗を諦めた。
「碧い瞳も吸い込まれそうなくらい澄んでいますね。私の目もそこそこ評判でしたが、あなたには負けますよ」
至近距離で見つめ合う。
――この人は怪しすぎて、逆に怪しくない。
無理矢理合わされた彼の濃い碧眼を見ながら、シドウはあらためてそう思っていた。
イストポートでの、シーサーペントのアンデッド化。
その事件が起きた直後に、自称世界有数の魔法使いが街を出発。しかもあの現場にいたという。
あまりにもぴったりすぎて、まるで「私がシーサーペントのアンデッド化の犯人であると疑ってください」と言っているようなものだ。
そして、こちらのことを知っていながら同じ馬車に乗ってきたことや、ご丁寧に自己紹介をしてきていることも不自然。犯人の行動としては大胆すぎる――。
そのような理由から、シドウは彼に容疑者のレッテルを貼る気にはならなかった。
「うわあ、なんか危ない関係に見えちゃう……」
「おお、これは申し訳ありません。妬けてしまいましたか? ティアさん」
「え、ぇえ??」
ティアがにわかに慌てた様子を見せる。
見つめ合いから解放されたシドウは、力の抜けていたアランの手を外すと、少し上体を右方向に動かし、距離を確保した。
「何を言ってるんですか……。でもアランさん、ティアの髪のほうが良くないですか? 黒くて、長くて、サラッとしていて。目も綺麗な黒目ですし」
「ぇええ? な、何? 急に。気持ち悪い」
「いや、前から思っていたけど。急に思ったわけじゃない」
「えっ? え? え?」
アランが若干呆れたように「シドウくんは色々駄目なようですね……」と言う。
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