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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十六話 孤高のスタンドプレイヤー
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イジさんに狙いを定める。
「行きます」
言い終えるのと同時に体は動き出した。
両足に込めた少量の魔力を踏み込みと同時に爆発させ、加速した走行で間合いまでの距離を詰める。
その距離は実際の刃が届くような距離じゃない――――魔法で作り出した刃なら届くっ!
鞘から走らせるように抜刀する刃の先に魔力を纏わせて、抜刀の瞬間に斬撃として飛ばす。
それを通常の抜刀ではなく、光速で行なうことで斬撃はより濃くハッキリとした形を作り出し、抜刀と同じ速度――――弾丸を超えるほどの光速で放つことができる。
「天流・第壱翔/雷切っ!」
それは何度も使ってきた俺の十八番の剣技。
故にその使い方は多様であり、近接用のものがあれば連発しての防御用、今のような中距離まで飛ばすことができる使い方も編み出した。
全ては自分の可能性を広げるため。
大切な人を守る可能性を上げていくため。
「おせぇなっ!!」
しかしケイジさんは、そんな俺の想いをいとも簡単に打ち砕いてくる。
右腕だけでその大剣を軽々と振り上げてみせたと思えば、その刃を勢いよく振り下ろしてみせた。
通常、物体を速く動かそうとすると空気抵抗と重力が壁のように邪魔をして速度の上昇を妨げる。
それは物体の質量や思考方向に対しての面積が多く、広ければ広いほど大きなものになる。
つまるところ、ケイジさんが使うような大剣を速く振るって言うのは難しいってことだ。
大きいから動かせる範囲が狭いし、重さや空気抵抗などでその速度は低下する――――はずなんだ。
だけどケイジさんは、そんな常識すら叩き落とすような速度で大剣を振り下ろし、光速で迫る雷切の斬撃に刃を当ててみせた。
重さや速度、なによりケイジさんの力に負けた斬撃は粉々に砕け、地面に魔力の粒子となって散りながら消えていく。
「まだだっ!」
「そうだ、こんなもんで終わってもらっちゃ困るなぁ!」
ケイジさんが規格外の強さを持ってることなんて知ってることだ。
今更ビビったり驚いたりする必要なんてない。
俺は勝つんだ。
勝たなきゃいけないんだ!
「――――っ!」
やることはそう変わらない。
移動速度を限界まで上げるために刀は握らず鞘に収め、体の姿勢は獣のように低くする。
呼吸は細かく行い、心臓の動きを加速させて全身に駆け巡る血液の循環速度を上げる。
光速循環を始める血液と同じ速度で魔力を全身に駆け巡らせ、身体能力を限界まで上昇させる。
それによって皮膚から太い血管だけでなく、細い血管まで浮き出て瞳は充血して紅くなる。
俺は少しずつ、人の形を失っていく。
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