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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 切なさと温かさ
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人が、フェザーン人がダンスを申し込んできました。私はその全てに笑顔で答え、ダンスを踊りました。
パーティが終わり、同盟の高等弁務官府に戻る途中、歩きながら大尉が尋ねてきました。
「中尉、ナイトハルトは何か言っていましたか?」
「大尉の事を心配していました。それとアントンとギュンターが例の件を調べている。必ず大尉を帝国に戻してやると……」
大尉は黙って聞いています。
「それと、大尉を守れなかったと言って後悔していました」
「……」
一体二人の間に何が有ったのです、そう聞きたかった。でも聞けませんでした。大尉は少し俯き加減に歩いています、聞けませんでした……。
「大尉のことをエーリッヒと呼んでいましたよ、親友だと言っていました」
深い意味は無かったと思います、ただ何か喋らなければ遣り切れなくて喋っていました。それなのにヴァレンシュタイン大尉は足を止めました。私も足を止めます。正面を見たまま大尉が虚ろな表情で話し始めました。私が横に居ると分かっているのでしょうか?
「エーリッヒ、ですか……。私をそう呼んでくれる人は同盟には居ません」
「……」
「名前を呼んでくれる人が居ない、それがこんなにも寂しい事だとは思いませんでした」
「……」
大尉がまた歩き出しました、私も後を追います。
「五年前、私は両親を貴族に殺されました。あの時、私は全てを失ったと思いました。もう失うものなど無いと……」
「でもそうじゃなかった……。私にはまだ大切なものが有った……。ナイトハルト、アントン、ギュンター、私は寂しい、卿らに会えない事が本当に寂しい……。でも、頼むから無理はしないでくれ。卿らが生きていてくれればそれだけで私は十分だ。だから、私の事など忘れてくれ……」
そう言うと大尉は俯きながら足を速めました。もしかすると泣いているのかもしれません。少し離れて大尉の後を追いました。私は大尉の泣いている姿など見たくありません。大尉には笑顔が似合うと思います。たとえその笑顔を怖いと思っても笑顔のほうが絶対に似合う……。
私はこれまで大尉のことを亡命者だと認識していました。でも亡命者という存在が何なのか分かっていなかったと思います。亡命者が捨てるのは国だけじゃない、友人も思い出も全てを失う。それがどれほど寂しい事か……。大尉はいつも笑顔を浮かべているけどどんな気持で笑顔を浮かべているのか……。
バグダッシュ大尉、今日ミハマ・サアヤ中尉は帝国を相手に初めて諜報戦を行ないました。諜報戦は私の想像とはまるで違いました。温かくて切なくて泣きたくなる、そんな諜報戦でした。
大尉、今日のことを私は報告しません。裏切ったわけでは有りません。ただ報告したくないんです。どれほど言葉を尽くしても彼らの温かさ、切なさを説明できるとは思え
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