76部分:血の絆その五
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血の絆その五
それまでの逃走から一転して攻勢に移った自軍をシャナンは会心の笑みを浮かべて見ていた。
「イザーク伝統の釣り出し戦法、まさかこうも見事にかかるとはな」
「釣り出し戦法?」
兵士の一人がキョトンとして尋ねた。
「そうか、御前は確かレンスター出身だったな。知らないのも無理はない」
「はあ」
「釣り出し戦法とはあらかじめ兵を伏せておき兵の一部で敵を伏兵の位置まで誘き出す。そして伏兵と誘い出した兵を以って敵を叩くのだ。元々は狩りで使われていたものを戦争に応用したものだ」
「へえ、そうだったんですか」
「よし、我々も行くぞ。奴等を倒しアルスターを解放するんだ!」
「はっ!」
そしてシャナン達も戦場へ向かった。
解放軍の不意の攻撃を受けフリージ軍の先軍及び左右の両軍は総崩れとなった。無数の矢を受け倒れる者、剣に貫かれる者、炎と雷に攻められる者、緑の旗ばかりが地に落ちていく。
「うぬぅっ、田舎から出て来た烏合の衆と思っていたが小癪な手を・・・・・・」
ケンプフは忌々しげに攻勢を掛けてくる解放軍を見て呟く。
「バルベデスとザイルからの連絡はまだか!」
「はあ・・・・・・」
側の騎士が力無く答える。
「ぬうっ、この様な場所で死んでたまるか。こうなれば私だけでも・・・・・・」
部下を見棄てて逃げようとした。不意に後ろから声がした。
「閣下」
二人の男の声だった。険のあったケンプフの顔が急に明るくなった。
「おお御前達、来たか・・・・・・」
確かに二人はいた。だがその姿は首だけであった。
ザイルの首はブライトンが、バルベデスの首はグレイドがそれぞれ手に持っていた。
「くっ・・・・・・」
「そいつ等真っ先に逃げようとしたんでな。あっという間にああなっちまったよ」
怯むケンプフの前にホメロスが出て来た。
「悪いが逃げられねえぜ。あんたの部下は皆討たれちまったよ」
「うっ・・・・・・」
「まあ今までの報いだね。諦めた方がいいよ」
「糞っ・・・・・・」
「どうしてもというのなら俺に勝ってからにするんだな。もっとも俺はかなり強いがな」
「ふんっ、なめるなよ」
ケンプフは構えた。腰の剣は抜かない。魔法を使うつもりらしい。
「トローーン!」
右拳を突き出した。雷の光線が凄まじい速さで唸り声を挙げながらホメロスに襲い掛かる。
ホメロスは迫り来る雷撃を余裕の笑みを以って見ていた。構えを取った。
「トルネード!」
左手を下から上へ振り上げる。竜巻が起こり爆音と共に雷光へ突き進む。
雷光と竜巻が激突した。轟音が起こり雷と風が飛び散った。
トローンとトルネードは互いに相殺し合い消え去った。白い土煙が霧消した時ケンプフの視界にホメロスの姿は無かった。
「むう!?」
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