巻ノ八十一 上田城へその七
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「よいな」
「はい、わかりました」
「それではです」
「上田の城を攻めましょう」
「囲んだうえで」
「そうせよ、この数じゃ」
それ故にというのだ。
「一気に押し潰せる」
「ですな」
「如何にあの城が堅固でもです」
「この数ならば」
「何でもありませぬ」
「攻め落とせます」
「このまま」
こう言うのだった、誰もが。
「鉄砲もあります」
「それを放ち」
「そして兵達を進ませ」
「まさに一気にです」
「出来まするな」
「うむ、本丸まで攻め」
そしてというのだ。
「そこであらためてじゃ」
「降る様にですな」
「真田殿に勧める」
「そうしますか」
「それでいこう、ではな」
ここまで言ってだった、そのうえで。
秀忠は自ら軍勢を率い城攻めをはじめた、だが。
その彼を観てだ、信之は言った。
「これはな」
「はい、やはり」
「大殿の言われる通りにですな」
「なりますな」
彼と共にいる者達も言う。
「あの城で足止めを受ける」
「無闇に上田の城を攻めて」
「そのうえで」
「わしとしてはな」
徳川方に加わったからとだ、信之は言った。
「ここは中納言様にじゃ」
「是非共ですな」
「お話をして、ですな」
「足止めにならぬ様にして」
「先に進むべきと」
「お話したところじゃが」
そうしていたというのだ。
「是非な」
「そうですな、やはり」
「そこは、ですな」
「目付程の兵を置き」
「そのうえで大勢は」
中山道を上がり家康が率いる主力と合流すべきだとだ、信之の家臣達も信之に言う。だがそれはだった。
信之は後詰として置かれている、それで軍勢の離れた場所で言うしかなかった。
「しかしですな」
「それはそうはならずに」
「残念なことに」
「我等はここにいます」
「後詰に」
「これでは何も言えぬ」
秀忠にというのだ。
「わしもな」
「ですな、これでは」
「見ているしかありませぬ」
「どうしても」
「これでは」
「全くじゃ、それではな」
また話した、そしてだった。
信之は後詰としてだ、戦の行方を見守るのだった。そうするしかないが故に。
攻め手は完全に上田城を囲んだ十重二十重に城を囲みそのうえでだ。
橋から城に迫ろうとしている、徐々に進んで来るその動きは理に適ったものであり隙がない様に見えた。
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