Side Story
少女怪盗と仮面の神父 42
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「大、司教？」
茫然と問うミートリッテに
「はい」
しれっと頷くアーレスト。
「司教候補、じゃ……なくて？」
彼がミートリッテを入信させると宣言した時の名目は、王都に上がっても恥ずかしくない『司教』候補だ。司教の頭に「大」など付いてなかったが……
「現大司教が退座されると同時に現中央区担当司教の業務を丸ごと引き継ぐ者で、現次期大司教が大司教を継承・退座された後のアルスエルナ教会総代表。即ち『次期の筆頭司教』で『二代後の大司教』に「確定」です」
司教でも大司教でも間違いではありませんよ。候補ではなくなりましたけど。
と、語尾に力を込めて念を押す、憎らしいほど爽やかな笑顔の神父。
「えぇ……と……」
今は亡きお母さん、お父さん。どうか、娘の話を聴いてください。
バーデル王国のとある海辺の町で元娼婦の子供として産まれ育ったミートリッテは、お母さんとお父さんの遺灰を海へ還した後、浮浪の末に行き着いたアルスエルナ王国南西端の浜辺で心優しい女性……ハウィスに拾われ、怪盗シャムロックになったり果樹園でお仕事を貰ったりした七年間の紆余曲折を経て、本日。現在住んでいるネアウィック村を内包した辺境地、リアメルティ領を治める領主・ハウィス=アジュール=リアメルティ伯爵の後継者に指名されました。
アルスエルナの崩壊を企むバーデルの暗殺組織を捕まえる為に仕組まれた就任だった……とは言え、正直、剣の使い方も知らない小娘を国防の重役に据えるのは如何なものかとも思います。
しかし、小汚い子供を温かく迎え入れてくれた恩人達を護れるという点では願ってもない立ち位置。生物を容赦無く切り裂く凶器を掲げて戦うのは嫌だけど、貴族に与えられた権力なら使い方次第で誰一人犠牲にしない道も作れる筈。どんなに難しくてもそれを目指して頑張ろう……と、決意した矢先です。
神父様に言われた通りの言葉を復唱したら、何故か伯爵の後継者に与えられた名前「インディジオ=リアメルティ」を自ら返上(？)した事になり、即刻「ミートリッテ=ブラン=リアメルティ」への改名宣告を受けました。
領主後継者の次は、アリア信仰アルスエルナ教会・現次期大司教の第一補佐。次の筆頭司教、二代後の大司教へ就任。だそうですよ。
おそらく世界最速。人類史上で新記録を樹立したんじゃないかなぁ。
経験値零のまま、数十分の間で二回も転職。
南方領貴族を騒がせた盗賊が、一南方領主の後継者へ。時には剣を持って戦う次期伯爵が、戦争反対・平穏一番を説く聖職者の一代表へ。
……おかしいでしょう？ 真逆です。それぞれの性質が見事に相反してます。寧ろ、共通点はドコ？ 転職の流れも転じた職自体も、全く以て意味不明です。なのに、私を伯爵の後継者へ指名したアルスエルナの第二王子と、強引な手段
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