Side Story
少女怪盗と仮面の神父 42
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気付いただけの、なんの力も持たない役立たず。お前を育てている時間への対価も払えない、未熟者。だからこそ、残された未成年の時分を最大限に活用し、お前に適した場所で多くを学び、そうして得たもので、お前の願いを形にしてこい。ハウィス達を護れるかどうかは、これからのお前次第だ」
冗談を一切含まない真摯な眼差しが。
先ほどイオーネに遮られた王子の言葉と、その後に続いたであろう言葉を耳奥に再生させる。
生活を改善したいと思っているのは南方領民だけじゃない。お前達を優先に助け舟を出せば、違う場所からも不平不満が飛び出す。その要望のすべてに応えられる力なんぞ、一般民はもちろん王侯貴族にも無いんだよ。だから
『お前達はお前達だからこそできることを。民は民にしかできないことを、責任と誇りを持って果たしてくれ』
『国とは、施政者が外形を守り、民が内側から支えて、初めて成り立つ物』
『剣や盾や鎧をハリボテにするかどうかは、着用者であるお前達次第だ』
王子が言いたいことは、なんとなく解る……気はする。
でも。
「アリア信仰で学んだって、もう……」
「少なくともハウィスさんの力にはなれますよ。貴女はリアメルティ伯爵の正統な後継者ですからね」
「…………は?」
伯爵の後継者?
その話は、名前を返上した時点でなくなったんじゃないのか。
不可解なアーレストの発言に目を瞬かせると、彼はにっこり微笑んだ。
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