Side Story
少女怪盗と仮面の神父 42
[7/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
て、自分には無い思想や感覚や知識を、時に受け入れ、時には盛大に反発し、競合し、迷い道で倒れるほどひたすら走り続けて。
自信を持って間違えながら。
自信を失っても、折れそうな弱さを律しながら。
そうやって、月日と共に己の限界を、己の傾向を、己の形を知るのです。
「貴女は多くの過ちを犯しましたが、大切な人を護りたい、という適性には気付けたでしょう?」
「……思うだけじゃ、何の役にも立てません」
「その通り。どんな人間でも頭の中でなら理想の自分でいられるだろうよ」
完全無欠な人助けで、死んだ後まで感謝され続けるも良し。
最強無敵の武力や知力で世界を征服するも良し。
すべては脳の持ち主が思い描くままだ。
けど、理想の殻を破れない人間は所詮、誰にとっても……
自分自身にとっても、無い物ねだりの足手まといでしかない。
「当然だろ? 頭の中だけで自分像が煮詰まってても、実際は空白な時間が流れているだけで、何一つ結果を残せてないんだから」
現代のアルスエルナ国民の大半がそうであるようにな、と。
王子に前髪を掻き混ぜられて、危うく前のめりに転けそうになる。
何をするのかと恨みがましい視線を送れば、真剣な表情とぶつかった。
「これまでの民は、生きるだけで精一杯だった。自身を顧みる余裕もなく、周囲の状況を見渡す冷静さもなく、気に入らない上位者に与えられた仕事をぶつくさ文句言いながら投げやりな思いで仕方なくこなしていく。そういう環境を強いられてきた」
だがそれでは国を保つ為の役割分担が満足に機能せず、社会全体を通した運営の効率も悪くなる一方。停滞した政治・経済では、各業界に商品の質を向上させたいって気概を持たせることも難しい。
つまり、国としての品位もいずれ内側から腐って落ちる。
他国に付け入る隙を与える結果になるんだ。
いいか? よく聴け。
あらゆる分野で見識を広め、何事にも全力で取り組み。
自身にできることと、できないことを実感し。
様々な経験を積み重ねて、自身に見合った力を収得し。
他人を知り、自己と他人の違いを見極め、自身の目的と願いを探求し。
個の限界と多との協力、切磋琢磨をくり返しながら。
理想を現実に変える術を学び、己の血肉として吸収していく。
そうして得たすべてを抱えて大人の枠に加わり。
王族だけでも貴族だけでもできないことを、自身の役割として担う。
それこそが、育成期間の保障と引き換えに未成年へ課した教育の意味。
未来のアルスエルナ王国を形成する子供達に与えんとしている力。
人間として生きる為の術だ。
「お前はまだ自分の適性に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ