Side Story
少女怪盗と仮面の神父 42
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限られている。
『口封じ』だ。
(私の……私の軽はずみな思い付きと行動が、ベルヘンス卿達にバーデルの国境警備隊を……十人もの人間を、殺させた……)
肩越しに覗き見たベルヘンス卿は、静かな目で成り行きを見守っている。
軽口を叩いたり、ちょっとからかってみたりもした、あの男性は。
平然と剣を振るい、人を殺す騎士。
殺した後でも感情を失わない、凶器の使い手。
(……っ! ……最低……)
今更ながら、ベルヘンス卿の……静かに佇む騎士の姿に背筋が凍る。
足がみっともなくガタガタと震え出した。
(最低だ、私。あの人達を怖いと思う資格なんか、私には無いのに……)
ミートリッテが山荘を燃やすまで、国境警備隊は確かに、アルスエルナの協力者だったに違いない。
でも、アルスエルナを貶める材料を見てしまったから。
たった一つ、見つけてしまったから。
何かを企む前に、殺された。
害になる可能性で生まれた、一方的な裏切り。
あまりにも身勝手すぎる理由。
既に物騒とかいう段階の話じゃない。
敵じゃなかった人を殺しても普通でいられる普通じゃない何かが怖くて、握ってる短剣を思いっきり遠くへ放り投げてしまいそうになる。
(普通じゃない? バカなことを。私が! そうさせたんでしょうが??)
ああ、けれど。
これが誰かを……国を護る騎士や領主、王族達の例外なき手段なら。
領主など、最初からミートリッテには務められない。
こんなやり方、ミートリッテには絶対できない。
誰かに同じことをされたとして、犠牲を回避する方法も思い付かない。
覚悟? 決意?
そんなもの、真っ白な紙切れ一枚より役に立たなかった。
(剣にも盾にも成り得ない以上、私は、ハウィスの傍には居られないんだ)
騒動の渦中に居たミートリッテは、バーデル軍にも顔が知れ渡り、領主の後継者でなくなれば、戦えない権力者の扱いでアルスエルナの弱点となる。
事態が鎮静化した後。
国境と接するネアウィック村に、ミートリッテが帰って良い家は無い。
アルフィンと談笑したり、ピッシュの農園で働いたり、ハウィスと帰宅の挨拶を交わすこともない。これからはずっと知らない場所で、知らない物や知らない人達を助ける重責に囲まれて、一人きり。
それが、ミートリッテに与えられた、罰。
「……人には、適性というものがあります」
急な虚脱感に襲われてうつむくミートリッテに、いつの間にか気絶してたイオーネを横抱きにして立つアーレストが微笑みかける。
「しかし、生まれた瞬間からそれを自覚している者は存在しません」
人間はそれぞれ、見て触れて、聴いて感じ
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