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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第六話 フェザーンにて
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たくなるに違いありません。でも私は大尉の素顔を知っています。

どうしようもないほど意地悪でサディスト、偽善者……。私は彼の作るお菓子は好きだけど彼自身には警戒心を解いたことはありません……、時々美味しいお茶の時間を過ごすと怪しいけれど、それでも時々です……。

大体私が一緒と言う事は情報部は未だ大尉をスパイとして疑っているということです。バグダッシュ大尉に聞いてもヴァレンシュタイン大尉から眼を離すな、どんな小さなことでも必ず報告しろと言われています。何時までこの任務は続くのか……。まさかとは思うけど、ずっと?

フェザーン、帝国と同盟の中間にある中立国家。表向き帝国の自治領となっているけど実質は独立国家である事は皆が知っています。戦争をする帝国と同盟の間で利を追求する事に専念するフェザーンには多くの同盟人が良い感情を持っていません。それは帝国も同様でしょう。

ハイネセンでは目立たない軍服もフェザーンではかなり目立ちます。ヴァレンシュタイン大尉の軍服が周囲から奇異の目で見られました。私にも視線が集まります。余り面白くはありません。私はベレー帽をかぶっていますが大尉はかぶっていません。ヴァレンシュタイン大尉が軍服を着てベレー帽をかぶると可笑しなくらい可愛くなってしまうのです。本人もそれを気にしているのでしょう、大尉がベレー帽をかぶる事は滅多にありません。

弁務官府に着くと早速部屋に案内されました。どうやらキャゼルヌ大佐が弁務官府の人達に私達に十分に良くしてくれるようにと頼んでくれたようです。おかげで私達に用意された部屋は本来なら将官クラスの人が使う部屋でした。キャゼルヌ大佐、有難うございます。

その後、首席駐在武官のヴィオラ大佐のところへ挨拶に行きました。大佐は長身で肥満しています、それなのに余り重そうな印象を受けません。妙な人です。
「明日から一週間ほどフェザーンに滞在すると聞いている。分からない事が有ったら何でも聞いてくれ、キャゼルヌ大佐からも協力して欲しいといわれている」

「有難うございます、その時はよろしく御願いします」
ヴィオラ大佐とヴァレンシュタイン大尉が話しています。こうしていると大尉は誠実で生真面目な少年にしか見えません。この偽善者め、私は騙されないから。

挨拶が終わり、部屋に戻ろうとしたときでした。ヴァレンシュタイン大尉が不思議そうな声を出しました。
「ヴィオラ大佐、その招待状は何でしょう、帝国の物のように見えますが?」
私は慌ててヴィオラ大佐の机の上を見ました。確かに帝国の紋章の入った招待状が有ります。

「その通りだよ、ヴァレンシュタイン大尉。帝国の高等弁務官府からの招待状だ。今夜弁務官府でパーティを開くらしい」
「行かれるのですか?」
大尉の質問にヴィオラ大佐が大声で笑い声を上げ
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