69部分:悪の巣その二
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
日解放軍が姿を現わした。その数約一万六千、先頭にはレヴィンがいた。
「レイドリック、いるか」
レヴィンは前に出て要塞に向かって声をかけた。
「何だ、亡国の王よ」
レイドリックが城壁の上に姿を現わす。隣にはイリオスと縛られているシャナンがいる。
「そこにいる裏切り者とシャナン王子を引き渡してもらおう」
イリオスとシャナンを指差す。イリオスはふてぶてしい顔でレヴィンを見下ろしシャナンは一切顔に感情を表わさない。
「馬鹿な事を言う。反逆者の分際で」
レイドリックは露骨に侮蔑の色を表わす。
「よく言えるな、主君を暗殺しレンスター王を奸計で殺害した男が」
レヴィンも嫌悪感を露骨に顔に出す。双方の間に激しい火花が生じる。だがレイドリックはそれを意図的に外した。
「フン、今卿と言い争いをしても何の意味も無い」
傍らのシャナンを指差す。
「明朝この男を反逆罪で死罪とする。要塞の屋上、ワルトラウテの像の前でな」
「くっ!」
レヴィンは歯軋りする。レイドリックはそれを見て満足気に邪な笑みを浮かべた。
「フフフ、かかったな」
踵を返す。レヴィンは慌てた。
「待て、逃げるか!」
レイドリックは喚く様に名を呼ぶレヴィンを尻目に得意げな笑みで無作法な敬礼をしたランツクネヒト達に言った。
「迎撃の用意だ。毒の矢で死ぬまで苦しめてやれ」
「はっ」
ランツクネヒト達は汚い歯を見せニッと笑う。矢にドス黒いものが塗られ城壁の下の解放軍へ向けてつがえられる。レヴィンはそれを見て口惜しそうに城壁を見たが後ろを向き自軍の方へ去っていった。彼の不甲斐無い有様にランツクネヒト達は呆気に取られた。レイドリックも拍子抜けしたが馬鹿にした笑みでそれを見た。だが彼は知らなかった。否、それに気付く筈もなかった。背を向け逃げるレヴィンの顔が笑っている事に。敵同士の筈のイリオスとシャナンが顔を見合わせ笑っている事に。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ