66.最終地獄・蹈節死界
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から何か探るんだろ?本気で抵抗しないと細切れだ。命を有効に使って探れよ」
再び、同時複数の斬撃音を残して黒竜の全身が引き裂かれた。
黒竜は最初の一度は何をされたのか理解できなかったが、二度目の斬撃において「やっとオーネストが斬撃の後に剣を鞘に納めるところを垣間見た」。そう、黒竜にはオーネストが剣を抜いて自身を斬った瞬間を全く認識できないまま、ただの本能で身を捻って致命傷を避け続けていた。
人間の形の肉体に不慣れなのは確かだが、身体能力そのものが以前より衰えている訳でもない。オーネストの斬撃を受ける皮膚や鱗も、黒竜時点での堅牢な防御力に劣るものではない。なのに、事実として黒竜は切り裂かれ、そして斬撃を見切れなかった。
これがオーネスト・ライアーの本気。神の尖兵でも傀儡でも何でもない。ただ自分のためだけに生き、自分の存在意義を神の意志さえ無視して決定する傲慢な男の、可能性の更なる先。そう、それでこそなのだ。
人は神に生み出された。
魔物は魔王から生み出された。
どちらも親に愛されし子で、同じ条件である筈だ。
しかし黒竜には、自分の意志の決定権は元を辿れば魔王の意志であると考え、「知ったことか」と吐き捨てるなどという発想は全く浮かびもしなかった。魔物はすべからく心の奥の、本能と限りなく近い場所にそれが普遍的に存在しうると思っていた。他の誰かに勾引かされる意志の脆弱な存在ならまだしも、そのような意志を抱くのは欠陥品の証だと思っていた。
しかしオーネストはその神にとっては致命的な欠陥を抱えながらも、他のどの人の子よりも手強く黒竜に戦いを挑み、生き残ってきた。その戦いの中で爆発的に成長してきた。オーネストは人の既成概念を打ち破る存在で、そして黒竜のそれをも打ち破る存在だった。
これだから人間なのだ。故に神の期待する人間なのだ。
小さな小さな脆くて儚いその肉体に、世界の創造を凌駕する可能性を内包しているのだ。
面白いのだ。興味深いのだ。知りたくて間近で見ていたくて、だから神々は地上へ降りた。
混沌と進化の権化。可能性の生き物。
だから、もっとだ。もっと人間を、可能性を知りたい。
その先に己の進化が待っているのならば、自分の行き先すら知りたい。
「我はまだ死なぬ、死ねぬ!希望と可能性を知るその時まで、存分に踊り狂おうぞ、オーネスト・ライアァァァァーーーーーーーっ!!!」
瞬時に再生された傷を撫でながら、黒竜は心底純粋な好奇心に胸を躍らせ、破顔した。
= =
全方位に張り巡らされた神経の網――第六感とも呼べる感覚を頼りに剣を抜き、斬り、そして納める。秒間に数十回は襲いくる斬撃や蹴り、尾やブレ
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