66.最終地獄・蹈節死界
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」
衝撃波の軌跡は、オーネストの肉体があった場所を中心に一本の道のように、衝撃波に抉られていないそのままの形で残っていた。他の全てが破壊しつくされた中で、そこだけが守られたように無事だった。首元を振ってごきり、と音を鳴らしたオーネストが、どこかうんざりしたようにごちる。
「しかし慣れないものだな。こんなものは脳筋馬鹿の発想だ。できる自分が嫌になる」
「爪を斬って衝撃波が発生した瞬間、貴様、返す刃で衝撃波の向きを上塗りしたな。それがお前の本当の実力というものか?」
「そんな大層なものでもない。やったのは素人でも知っている単純な技だ」
そう、オーネストが使ったのは秘伝の極意でも必勝の技でもなんでもない。
刀を、とりわけ日本刀を扱う人間ならば呆れるか、或いは感心するほどシンプル。
そしてオーネストの戦術とは本来致命的に噛み合わないもの。
「居合――ただ単純に、ただ速く、ただ正確に間合いを切り裂くだけの………極めて守護に近い技だ」
それが、オーネストがずっと使わずにいた忌々しい過去の遺物。
元々、オーネストの本気の斬撃は普段のような破壊と粉砕ではなく、静かに研ぎ澄まされた斬撃だった。感情が高ぶった時や絶対に斬ると決めた時しか使わなかったそれは、しかし抜けば必ず常軌を逸した速度で相手を斬ってきた。
しかし居合とは間合いに入った存在を斬るという特性上、常に特攻するオーネストの戦い方とは思想も相性も最悪。更に言えば、この居合を学んだ相手にオーネストは気がおかしくなりそうなほどの愛憎を抱いていた時期があったため、自然と使うことを嫌がっていった技でもある。
しかし、それは過去だ。経験したのはオーネスト・ライアーではなくその前だ。
「魔法も使った。自滅も捨てた。おまけに得意分野を使うようになった。だが、結果が伴う程の力を得た時には全てが手遅れだった。そう思っていた。だが――」
今、オーネストは過去ではなく現在、そして現在の続く未来へと歩んでいる。
ならば――もう躊躇わない。
「生きた人間ってのはそうであってもそうではない。決まったことなど何一つありはしない。何故なら……ああ、本当に馬鹿だ。俺が自分で言ったことだ。それは俺が決めるんだよ、全部」
瞬間――オーネストは黒竜の間合いに沈み込むように踏み込んだ。
次に待っていた光景は鱗や表皮を切り裂かれて後方に下がる黒竜。遅れて、空間にガギギギィッ!!と同時複数の金属音が響き渡る。吹き飛んだ黒竜が態勢を立て直そうと身を翻そうとしたその瞬間に、またオーネストは黒竜の目の前に沈むように近づいていた。
音もない。刃を鞘に納めている。似つかわしくないほどに静かだ。
しかして、その攻め手は――。
「そういえば貴様、俺
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