66.最終地獄・蹈節死界
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ったことが単なる偶然であることにすぐさま気が付いたらしい。
そう、黒竜は相手を斬るかどうかなど考えず、ただ手の具合を確かめる為だけに手を振っただけだ。ファミリアが斬られたのは副次効果であり、気にも留めなかったが故の生存であり、本気で攻撃するつもりがあれば今頃ダンジョンには輪切りの肉が数十ほど転がっていただろう。
『そんな都合のいい事は黒竜に限ってはあり得ない筈なのだが』、結果はそうなった。神に牙を剥く最強の尖兵が内包する尋常ならざる殺意が、あの瞬間には込められていなかった。というよりも今、確かに目の前にある筈の――自分に瓜二つと言っても、あまり鏡を見る趣味がないので実感は湧かないが――黒竜からは、そんな完成された暴力装置としてのそれを感じられない。
「皮肉だな」
「何が、だ」
「変わろうとしている。同じ姿になった者同士が、互いに」
「数奇な宿命を認めよう。神ではこの未来を予想することは不可能だっただろう」
憎み蔑む存在の力を取り入れる。口で言うのは容易な事だが、十世紀を超える時代も同じ存在であり続けた存在が自らを変えるなどというのは並大抵の変化ではない。そして、その変化を生み出した存在が何者なのかと聞かれれば、それは恐らく――。
「因果だな」
「何が、だ」
「変化の原因を与えたのは、俺たちか」
「数奇な邂逅を認めよう。この時代、この時間に貴様たちという存在が現れなければ、我もこのような考えは抱かなんだ」
奴が変化を恐れないというのなら、俺もまた『それ』を躊躇うまい。餓鬼の意地っ張りを貫いてこの8年間碌に使うことのなかったそれを引っ張り出して我が物顔で振るう厚顔無恥さで、自分ではない誰かの為にと反吐が出るような戯言を胸に秘め、巫山戯た夢想を貫き通そう。
不意に視線を感じて後ろを見たら、ベートに担がれてぐったりしながらこちらを見つめるアズと目が合った。ティオナやアイズ、リージュや他の顔見知り達も撤退しながらこちらを見ていた。
「これで勝って帰ったらお前たぶん『英雄』になっちまうけど、そこんとこどうなの?」
「これから戦うって時にやる気の失せること言うんじゃねえよ、アズ」
「テメェ、死んだら絶対に許さねぇからな!お前を完膚なきまでブチのめすのは俺だかんな!」
「分かった、分かったからその荷物の運搬は任せるぞベート」
「死んだら駄目なんだからね、オーネスト!!アンタが死んだらメリージアとか、あんたが名前も知らない人だって泣いちゃうんだからね!!アンタは生きて帰ってきて、これからの人生を真っ当に生きるの!!」
「オーネスト……生きて!生きて、またロキたちと一緒にご飯を食べたり一緒に戦ったりしよう!?」
「若造が生き急ぐなよ!人生は長いんじゃからな!」
どいつもこいつも、こんな屑の瀬戸
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