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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
66.最終地獄・蹈節死界
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 神より恩恵を受けた冒険者は、レベル1で常人と袂を分かち、レベル2で超人と袂を分かち、そしてレベル3で人というくびきと袂を分かつと言われている。一つの解釈の仕方として、ファミリアのレベル3以降に坐する存在というのは「人間ではない」。冒険者とは、恩恵とは、人が人より外へと踏み込む行為なのだ。

 だが、そもそも恩恵とは何か。

 恩恵によって人間が常識を外れた成長性を持つのならば、なぜこの世界の人間がたった一つの事実に疑問を抱かなかったのか、オーネスト・ライアーは不思議でならない。恩恵を受けた人間がどうしてそれを疑問に思わなかったのかが理解できない。
 いや、恐らくはこの世界の人間たちは「神に与えられた力」という1点にばかり目を取られ、重要な事実に気付けなかったのだろう。

 神の力で成長の限界を突破したとして、その膨大な力を収める器は変わらない。
 人が人の域を踏み越えた後でも、その見てくれは変わらずそこにある。
 化け物と称されるだけのエネルギーを、1枚の皮で抑え込む。

 「人間」という器は、一体どれほどの可能性を秘めているというのか。

 そしてその器の可能性を示したのがあの亜人染みた「異端児(ゼノス)」であるというのならば――試作品ではなく完成品(こくりゅう)は、一体どこまで手を伸ばすのか。魔物の限界か。人の限界か。或いはそれらすべてを内包し、その翼を天へと伸ばすのか。
 これが実験であり、実験が成功したとしたら、神と人類に残された道は何だ。

 ――そんな取り留めもない未来を考えつつ、しかしその未来に興味はない。

 一つの物事に意識が集中し、それ以外のすべての事柄が雑音以下の存在となって過ぎてゆく。
 今や幾度となく衝突した時に抱いた破滅的な欲動も感じず、ただ涼風が吹き抜けるような心地よささえ感じる。何もかもが滅茶苦茶だった自分の人生で、漸くたった一つだけ綺麗に物事が片付くような、根拠もない予感。

 今日、自分の手で、一つのケリをつける。

「オーネスト、彼は――」
「どけ、フィン。俺の獲物だ。冒険者のマナーは理解してるな?」

 駆け寄るフィンにそれだけを告げると、彼はすぐに察した顔をする。
 ダンジョンにおける魔物との戦いは、原則として横取り禁止。冒険者指南の要綱には乗っていない暗黙のルールだ。特別に厳守したことなどないが、こういう時には問答が不要で役に立つ。それに、せっかくなのだ。邪魔者は少ない方がいい。

 フィンは瞬時に思案を巡らせ、先ほどの黒竜の攻撃について洞察し、すぐさま結論を下した。

「………ロキ・ファミリアは現時点を以て撤退する。オーネスト、勝つんだよ」
「ついでにアズ達も連れていけ。ケリは俺が付ける」

 聡い男だ。あの一撃でファミリア達が即死しなか
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