第一章 天下統一編
第十三話 人質
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に手練れなのだろう。
「図星のようだな。お前達三人は朱印状の中身を読んでいただろう。三人とも動きが揃っていた。示し合わせて私に頭を下げる暇は無かった。あまりの驚きで動揺してしまったか」
俺の指摘に風魔三人は俺の洞察力に驚きを隠さなかった。
「どうだ。私の家臣にならないか? 二人にそれぞれ二十五貫(二十五石)やろう。士分だ申し分はないな。知行分の俸給を今直ぐにくれというなら米俵で払ってやろう。北条征伐で手柄を上げれば更に加増してやる」
俺が話を進めると二人は俺を沈黙して見ていた。彼らは捨扶持で北条に買われている者達だ。この二人には俺の申し出は魅力的なはずだ。二人は視線を夏に向けた。
「夏、もう一度言う。この二人を私にくれるなら風魔衆の無礼を忘れてやる。断るなら風魔衆とは手切りだ」
「小出相模守様、かしこまりました。風魔小太郎に伝え改めて返答させていただきます」
「何を悠長なことを言っている。お前の返答如何で風魔衆を手切れにすると言ったはずだ」
俺は淡々と相手に言った。
「私の家老になろうと言うのだ。風魔の者が私の直臣になることは喜ばしいことだろう」
俺は笑みを浮かべ言った。俺の言葉に夏は言葉に窮した。彼女は俺に対して軽率なことを言えないと思っているのだろう。ここで俺に「風魔衆の協力を必要とされているはず」と返すこともできるはずだ。だが、この選択肢を取ることができないということは風魔衆が俺との交渉を決裂させることができないということに他ならない。ある程度の無理は通せるはずだ。無理を通した分は待遇で埋め合わせすればいいだろう。
「北条征伐後に風魔小太郎には五千石の知行を与えよう。悪い話ではないだろう。望み通り家老に遇しよう。ただし、私が掲示した条件を果たさなければならない。夏、この条件を蹴るかここで選べ」
俺は淡々と条件を突きつけた。夏の表情が変わった。
「わかりました。風魔小太郎には私から報告させていだきます」
「お前が風魔小太郎に報告するのか?」
「人質の役目は忘れておりません。風魔小太郎に報告後に戻って参ります」
「いいだろう。三日やろう。三日以内に私の元にお前が戻らなければ風魔衆は私を裏切ったと見做す。北条征伐後は覚悟しておけ」
俺は脅すように夏に言った。夏は生唾を飲み込み俺に深く頷き平伏した。これで夏も真剣に風魔小太郎に報告するだろう。北条征伐は史実にあるように完遂される。北条が倒れれば風魔衆は路頭に迷うしかなくなる。風魔小太郎が俺を騙す気が無く、俺に近づいたことが保身のためなら俺の要求を飲むに違いない。仮に俺が夏に与えた情報が漏れたとしても俺の作戦の遂行に支障はない。その場合、藤林正保には頑張って貰うことになる。
雪と玄馬は惜しいが用心のため死んでもらうし
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