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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十三話 人質
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、俺の驚きは当然だ。

「小出相模守様、ご無礼の数々お許しください」

 三人とも震えていた。俺の立場がようやく理解できたのだろう。敵国の領地を知行地として安堵するということは通常はない。俺が秀吉縁者と知る彼らならば、本来は敵国の領地でなく治めやすい領地を宛がうはずだ。それを無視して敵国の領地を与えるということは秀吉が俺を高く買っているということになる。秀吉の身内である俺が伊豆国の統治に失敗すれば、秀吉の面目は潰れるからだ。

「雪。玄馬。この場で自害しろ。小出相模守様、ご見聞をお願いいたします」

 夏は平伏して固い声で雪と玄馬に命令した。雪と玄馬も覚悟したのか懐から短刀を抜き出した。

「待て!」

 俺は首に短刀を突き立てようとした雪と玄馬を制止するように甲高い声で叫んだ。二人は寸でのところで短刀を止めた。夏は叫ぶ俺に驚いた顔をした。

「死ぬには及ばない。自害させるなら二人を私にくれ」

 文字の読み書きができ、腕が立つなら殺すのは勿体ない。俺の家臣に組み入れて使う。雪は女だから直臣にできないから侍女にすればいい。玄馬は俺の家臣するとしよう。
 夏は俺の申し出に意味が分からない様子だった。俺が二人に死ねと要求したのだから夏は意味が分からなくて当然だ。雪と玄馬も短刀を持ったまま制止していた。

「お前達が私にした無礼は忘れる。自害したなら風魔衆では無いだろう。だから、お前達は私に仕えるのだ」

 風魔三人は俺の言い分が理解できない様子だった。

「小出相模守様、雪と玄馬は風魔の者です。小出相模守様の家臣にすることだけはお許しください」

 夏は自分で判断できない事案と思ったのか。俺の要求に断ってきた。

「何を言う。先程、お前は二人に言ったではないか。二人に『自害せよ』と。自害すれば死人だ。死人ならば風魔衆ではないだろう。私に二人をくれ」
「二人をどうされるのです」

 藤林正保が困り果てた風魔三人に変わって助け船を出した。

「二人を私の家臣にするのだ。雪、お前は女子(おなご)だから侍女として雇ってやろう。玄馬、お前は私の直臣にしてやろう。死ぬつもりだったのだ。不服はないだろ」

 俺は真剣な表情で二人に言った。藤林正保と風魔三人は俺の考えの変化に追いついてこれずにいた。先程まで自害しろと言った相手に自分の家臣になれと言う俺の考えが理解できないのだろう。

「どうして急に考え変えられたのです?」

 藤林正保は俺の考えを理解しようと俺に質問してきた。

「雪。玄馬。お前達は文字の読み書きができるだろう?」

 俺の指摘に二人は静止した。動揺を露骨に表に出さない二人を見て、俺は二人を更に高く評価した。初対面は減点だが使えそうな人材だ。柳生宗章が警戒するくらいならそれなり
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