第一章 天下統一編
第十三話 人質
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だろう。これでは風魔が私に敵対していると見ても仕方ない」
俺は不快感を隠さず夏に厳しい口調で声をかけた。徳川家康が風魔衆を取り込まなかった理由は山賊崩れの輩と思ったからかもしれない。徳川時代になると風魔衆は夜盗になり下がったからな。
「返す言葉もございません」
夏は俺に抗弁もせず平伏したまま謝罪した。雪と玄馬も夏に倣って平伏して謝罪した。この二人は豊臣に恭順することを快く思っていないのかもしれないな。そんな者を人選する風魔小太郎の器量を疑ってしまう。これで家老待遇にして欲しいとは過分な要求に思えてきた。
「風魔小太郎は私に家老待遇を求めてきた。夏、それに相違ないな」
俺は気分を直して夏に風魔衆の要求を確認を兼ねて聞き返した。
「その通りでございます」
「私の家臣になろうという者の陪臣がこれでは懸念を抱いてしまう。家老の地位を望むなら尚更だ」
俺は厳しい表情で平伏する夏に言った。藤林正保も俺を諫めることはない。俺の言い分は当たり前のことだ。
「どうすればお気持ちを収めてくださいますでしょうか?」
夏は顔を上げて俺に言った。その表情は真剣だった。彼女はこのままおめおめと帰る訳にはいかないように見えた。それなら何故俺に会う前に二人を説き伏せて無かったと心の中で突っ込んでしまった。
風魔衆の協力を得ること前提で作戦を組んでいたが、この様子では風魔衆を頼りにすることは危険に感じた。俺の雰囲気から夏は俺が風魔衆から興味が失せたと感じとったように見えた。これで俺の家臣になるとか無理だろう。不安定要素が多い勢力を組み入れて使うことは危険だ。いつ俺を裏切るか分からないからな。
「小出相模守様、何なりと申しつけてください。何でもいたします」
夏は必死な表情で俺に訴えてきた。俺の要求は一つだ。不安要素は速やかに排除する。
「その二人に自害を申しつけよ」
俺はあっさりと夏に命令した。雪と玄馬は俺の軍に置くことは危険だ。本能的に感じた。もし夏が俺の要求を拒否すれば風魔衆は切る。作戦の練り直しが必要になる。
「分かりました」
夏は俺の顔を見て頷いた。瞳に動揺が感じられたが本気のようだ。
雪と玄馬が俺の要求に素直に従うか。
「小出相模守様の陣屋から死人を出してはご迷惑をおかけいたします。この者達の処罰は私に一任くださいませんでしょうか?」
俺は冷めた目で夏を見た。咄嗟の機転の良さは評価するが、この状況で二人を庇うようでは信頼を置くことはできない。
「気にするな。その者達は賊として死体を処理する。ここは北条の勢力圏だ。賊の襲撃があったとしても別段おかしくはない」
「小出相模守様、直答をお許しくださいませんでしょうか?」
俺の言葉に固まる夏を余所に
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