第一章 天下統一編
第十三話 人質
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で後悔するがここで引き下がることも変だと考えた。
「南蛮では再会を願う時に右手で相手の右手を握るのです」
石田三成は得心した様子で頷き、腰を落とし俺の差し出した右手を握った。俺も石田三成の手を握り返した。
「なかなか良いものだな。藤四郎、小田原で待っているぞ」
「はい」
石田三成は握手を気に入った様子で温和な表情で俺を見た。
俺は石田三成との親友フラグを立ててしまった気がする。
俺は石田三成と再会を約束すると韮山城に向けて出陣した。
織田信雄を総大将とする豊臣軍は下田街道を南下していた。目的地は北条氏規が守る韮山城だ。この軍に俺も一武将として同行している。俺の与力である郡宗保、石川頼明、野々村吉保も一緒だ。
長久保城から韮山城には一日半位で着くことができそうだ。
豊臣軍は韮山目前まで進軍する頃には日が暮れた。俺達は行軍を止め野営を取ることになった。織田信雄の命令によるものだ。
兵達に設営させた陣屋の中で俺は家老達と食事をしていた。
手に持つ飾りっ気のない素朴な椀には飯が山盛り盛られていた。床に置かれた膳の上には固形状の味噌が小皿の上に無雑作に配膳されていた。
俺は箸で味噌を摘まみ飯の上に乗せると飯をかきこんだ。
戦場飯とはわびしいものだな。せめて味噌汁が食いたい。
家老達に視線を向けると彼らは黙々と食べていた。
わびしい。
毎日毎日、山盛り飯に味噌、それか干し飯に味噌。
京を立ち伊豆まで来る間の飯の献立はこの二種類だ。
俺は態度に出すこと無く飯をもりもりと食べる。
これでも毎日食えるだけましなのだろう。
この時代は飯を食べれるだけ幸福だと思う。
ここまでの道中でよくがりがりに痩せた農民達の姿を見た。豊臣に臣従した大名達の領地はおしなべて同じだった。徳川領も同様だった。物が不足していることもあるが、領主層が民に重税を課しているせいで下々の貧しさに拍車をかけているような気がする。
この時代に人権意識などあることを期待するだけ無駄だろう。民を慈しむ精神を世に広めたのは徳川綱吉まで待つ必要がある。犬公方と揶揄されるが徳川綱吉は意外なほどに人道家といえると思う。
大名には善人はいないとつくづく思う。かく言う俺も善人とは言えない。
俺の軍役に使われる米や金は元々領民から徴収した年貢だ。今回は豊臣家から年貢分を受け取ったが、今年からは領民から年貢を徴収することになる。石田三成の話では七公三民らしい。この税率で領民達は生活できるのか疑問が残る。多分だが領民の中には隠田を持っている者達も居るはずだ。それで食いつないでいるのかもしれない。秀吉はそういう農民の事情を知ってか、金に困ると検地を行っていたと本で読んだことがある。
俺は飯の盛られ
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