累(かさね)
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を上げた。
「俺は受験で忙しくて病院にすら駆けつけなかったし、あー産まれたか、くらいの感想しかなかったけどな」
あの、ホームドラマとかでよくある、妊婦の腹に頬をあてて『動いてる、動いてる!』とかもやらなかった。当然だ、15歳といえば思春期真っ盛りだ。姉といえど女子の腹に頬ずりとかあり得ない。
「姉貴は腹の中の小梅と、話をしているようだった。…なぁ、人って」
…云いかけて、やめた。人はいつから、魂を宿すのだろう。腹の中の子供を屠り生を受ける奉は、その答えを知っているのかもしれない。だがそれを奉に問うのは、些か無神経な気がした。
「俺が屠った子供たちは、どんな小さな胎児も全て、魂を宿していたねぇ」
俺が呑み込んだ問いに応じるように、奉は呟いた。
「思うに、その形を成す前から宿る魂は決まっているのだろうねぇ。それが運命なのか単なる順番なのかは知らないが」
くくく…と襟巻の奥から奉のくぐもった笑いが漏れた。
「だから俺は、また同じ事を繰り返すだけなのかもしれない」
―――え?
厭な予感がした。
「お前に鎌鼬を預けた『あの子供達』が云っていたねぇ」
△△△が、子供を攫う。子供を、殺す。
「奉…まさか」
「屋敷の子供を導き出し、鴫崎の子に宿す…?」
ははは…と乾いた笑いが響いた。
「それこそ、まさかだねぇ。俺を殺すほど憎むあの子らが、俺の導きに従うとでも?」
俺は『黙認』しただけだ、と奉は呟いた。
「誰が、何の為にそんなことを」
「さてね…」
呟いて、奉は視線を彷徨わせた。その視線の先に何を幻視しているのか、俺には分からない。
「鴫崎の、子供は…」
「勘違いするな、化け物じゃない。…普通の子だ。遠い昔に産まれる事が出来なかった、普通の子。その生まれ変わりだねぇ」
俺が殺した、普通の子だよ。そう呟く奉の横顔には嗜虐とも自虐ともいえぬ表情が浮かんでいた。
やがて、分娩室から細い産声、そして鴫崎の嗚咽とも歓声ともつかぬ叫び声が上がった。咄嗟に立ち上がる俺の隣で、奉はただ静かに、文庫本を繰り続けていた。『累が淵』というタイトルが、視界の端に入った。
「――その本」
「殺された継子を核に繰り広げられる、因果応報の『実話』だ。…継子を殺した男はやがて、自らも子をもうける。しかしその子供は、自ら殺めた継子に生き写しだったのだよ。その子は『累』と名付けられたが、村人たちは継子の祟りと噂し合い、継子が、かさねて産まれた『累』と呼ぶ」
「生まれ変わり…か」
「さてねぇ。本当のところはどうなのやら…とにかく、結局早くに両親を亡くした累は、悪い男に引っかかる。そして殺された継子同様、邪魔者として屠られる。そして累を殺した男は6度、妻を娶るが悉く早世。よ
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