第193話 洛陽鎮護
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にも敵意を抱いていることが理解できた。そのことから正宗は董卓が賈?にある程度荷担したと推察した。
「私の討伐の勅を出す献策を行った者の首謀者は董仲穎なのか?」
正宗は敢えて「献策」と言葉を使った。それに劉協は拳を握りしめる。彼女は賈?に脅迫された時の光景が蘇ったのか怒りと悔しさが無い混ぜになった表情を浮かべた。劉協とってそれ程までに屈辱的な行為だったのだろう。
「あの女が。賈文和が画策したことだ。正宗、お前を襲撃計画を実行したのは賈文和だ。だが、董仲穎は事後にそのことを追認し賈文和に同調した」
劉協は怒りを抑えながら正宗に問われるままに素直に答えた。正宗は劉協から聞くべきことを聞き終わると納得したように頷いた。
「賈文和は反逆者として私が処刑した」
正宗の返事に劉協は無表情だったが、虚空をしばし眺めた後に口を開いた。彼女は力が抜けたように立っていった。彼女は賈?が処刑されたことを聞き満足気な表情だった。しかし、彼女の瞳には覇気が無かった。
「正宗、朕を殺しにきたのか?」
劉協は落ちついた様子で正宗の顔を見て言った。彼女は全てを受け入れようという表情だった。彼女は経緯はどうであれ友を裏切り死に追いやろうとした。そして、彼女は正宗が現在の朝廷に天下をまとめる力はないと考えていることを知っていた。だから、正宗は朝廷中央に身を置かず辺境に身を置くことを選んだ。それを劉協は咎めること無く正宗のことを影ながら応援していた。
賈?の暴走で皇帝に祭り上げられ、皇帝の膝元で董卓軍によって百官を血祭りに上げられた。皇帝の権威などないに等しい。その正宗にとって自分は倒すべき存在であると直感したのだろう。だが、劉協は自分が裏切った友に斬られるなら本望と思ったのかもしれない。
「私はお前を助けにきた」
正宗は友に会えたことを喜び劉協に優しい言葉をかけた。彼の態度に劉協はいたたまれなくなり顔を伏せた。劉協は肩を震わせていた。
「どうしてなのだ?」
「私は協に出会った日に協を救おうと心に誓った」
劉協の呟いた言葉に正宗は即答した。
「私はお前の命を狙ったのだぞ。お前を裏切ったのだぞ」
劉協は素の自分で正宗に聞いた。そこには皇帝と臣下の関係は無かった。劉協は友として正宗に話しかけていた。
「それはお前の意思だったのか?」
「私の意思で勅を書いた」
劉協は拳を握りしめながらはっきりと答えた。彼女は力尽くで賈?に勅を書かされたことは口にしなかった。彼女が言い訳しない理由は自分が正宗を裏切ったことに変わりないと思ったからだろう。
正宗は劉協の生真面目さに好意を抱くと同時に、海千山千が巣くう朝廷において劉協が生きていくことは難儀だったことだろうと思えた。困難な状況にある劉協に
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