62部分:ターラの花その七
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ターラの花その七
新たに二万の兵を加えた解放軍はターラ城へ入城した。市民達は解放軍を歓喜の声で迎え街は喜びに沸きかえった。
大歓声の中セリス達は街の大通りを進み公爵家の館の前に来た。白を基調とした大人しい造りである。全体的に質素であるが気品漂う館である。階段の上に褐色の樫の木で造られた扉がある。扉がゆっくりと前へ開いていく。その中から可憐な少女が現われた。
「初めまして、セリス公子。ターラのリノアンです」
「貴女がリノアン公女・・・。僕はセリス。解放軍の盟主を務めています」
二人は互いに礼をして返した。リノアンはペコリと頭を下げセリスはシアルフィ式の敬礼をした。リノアンが階段を降りセリスへ歩み寄って来る。
「ターラに来て頂き有り難うございます。市民に替わって御礼申し上げます」
美しい笑みを浮かべる。今までの深い憂いをたたえたものではなかった。
「いえ、トラキア軍の非道さは我々も良く知っております。彼等を再びレンスターに入れるわけにはいきません。それに窮地に陥っている者を救わないのは騎士の行いではありません」
「セリス公子・・・・・・」
「リノアン公女、城の守りを我等が任う事をお許し下さい。トラキア軍を退けてみせます」
「はい」
解放軍本軍は夕方にターラに入城した。城内だけでなく城外にも多くの兵が布陣していた。陣はトラキア軍の方を向いており明らかに彼等に対抗していた。城の内外から志願兵が殺到しその数は千を越えた。
そんな中黄昏のターラでミーシャとアズベルは街中を二人で歩いていた。夕食は何にしようか、と話し込んでいる。
「アズベル君は何が食べたいの?」
ミーシャは周りの店を見回しながらアズベルに聞いた。アズベルは少し考えながら言った。
「え〜〜っと・・・。パスタかなあ」
「パスタ?」
ミーシャが尋ねた。
「はい。麦を練った生地を麺にしたり煙管みたいな形にしたりしたのを茹でて色んなソースをかけて食べるものらしいです」
「ふうん、美味しそうね」
「はい。それに何処でも食べられる手頃な料理らしいですよ」
「よし、それにしましょ。そうね、あのお店なんか良さそうね」
「はい」
『ファルスタッフ』と書かれた大きな看板を掲げた店に二人は入ろうとしていた。その時だった。
店の窓から木製の椅子が投げ飛び続いて皿やフォークが飛んできた。店の中から何やらけたたましい喧騒の声が響いてくる。
「まさか・・・・・・」
解放軍の誰かかも、ミーシャは夜になる度に起こる解放軍の面々のドンチャン騒ぎに思いを巡らせた。それが発展して喧嘩になったとも考えられる。
「ラクチェかしら?それともホメロスさん・・・・・・。タニアやヨハルヴァさんも危ないか・・・・・・。なんかこんな事には候補者が多いわね」
フゥッと溜息をつ
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