61部分:ターラの花その六
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ターラの花その六
翌日トラキア軍の動きは活発化した。偵察の竜騎士がフリージ軍のすぐ近くの場所や思いもよらぬ遠方まで飛び不穏な動きが一層顕著になった。それに対しフリージ軍もターラも警戒を強めた。
「フフフフフ、見ろ。フリージもターラも我等の一挙手一投足に慌てふためいておるわ。馬鹿な奴等よ」
トラバント王は竜に乗り天空を舞いながら傍らの竜騎士に言った。その眼下にはターラ城とそれを包囲するフリージ軍がある。
「奴等の間で衝突が起こるのは時間の問題よ。そうすれば我等の思うつぼだ」
不敵な笑みを浮かべる。その白い顔が陽に照らされより白くなる。見ると陽が既に高く昇っている。
「陽も高く昇ったか。そろそろ陣へ戻り休みを取りその後また作戦を練るとするか」
「はっ」
「アリオーンとアルテナにも伝えよ。陣に戻り軍議に出よと」
二騎の竜騎士がそれぞれ左右に飛んだ。王が竜騎士達を連れ陣へ戻ろうとしたその時だった。
「陛下、大変です!」
一騎の竜騎士が血相を変えて飛んできた。
「何事だ?」
普段は至って冷静な男である。それが酷く狼狽している。何かある、そう確信した。
「・・・何かあったな。申してみよ」
「は、はい・・・・・・」
騎士は呼吸を整え落ち着きを取り戻してきた。そしてターラの北西を指差した。
「あれを・・・・・・」
「むっ!?」
望遠鏡を取り出して見た。そこにはトラキア思いもしなかった者達がいた。解放軍であった。
解放軍の大軍がターラに現われた事によって事態は一変した。待ちに待った援軍にターラ市民達は狂喜し城の守りは更に堅固なものとなった。トラキア軍は動きを止めターラ城を挟んで解放軍と睨み合う形となった。
とりわけ微妙な立場に置かれたのはイリオス率いる二万のフリージ軍だった。今まではターラを牽制しつつ兵力的に劣るトラキア軍と交渉していたのが新たに圧倒的な兵力を持つ敵軍が後方に現われたのだ。兵士達は浮き足立ち部隊を率いる指揮官達もイリオスの下に集まり軍議を開いていた。
「正直言って勝ちめはありません。このままでは我が軍はターラ、トラキア、シアルフィに攻められ全滅です」
参謀の一人が天幕に掛けられたターラの地図を棒で指し示しながら意見を述べる。イリオスはそれを黙って聞いていたがやがて口を開いた。
「他に何か考えのある者は?」
いなかった。皆同じ事を考えていた。
「・・・・・・だろうな。北西にはシアルフィ軍、南東にはトラキア軍、我等には最早逃げ場は無い」
イリオスは更に話を続ける。
「かと言って戦って死のうにも何故レンスターの者がグランベルの為に死ななくてはならないのか、と考えているな」
その通りだった。この軍はほぼ全員がレンスター出身の者で構成されており将校達もそうであった。イリオス自身
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