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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 パンドラ文書
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えない。

「帝国軍はヴァンフリート4=2に来ませんでした。ヴァレンシュタイン中尉は帝国に情報を漏らしてはいなかった……。そして今回、スパイの可能性を指摘した。完全とは言えませんが彼がスパイの可能性は低いだろうというのが情報部の見解です」
キャゼルヌ大佐が渋々ではあるが頷いた。

「同盟軍は今回のサイオキシン麻薬の件を帝国の陰謀として徹底的に利用する事に決めました。ヴァレンシュタイン中尉にも協力してもらいます」
「協力?」

「帝国の陰謀を見破ったのはヴァレンシュタイン中尉です。彼は両親を帝国貴族に殺され、自身も殺されそうになった。その悲劇の人物が帝国の陰謀を見抜いた、そういうことになります。本人は嫌がるかもしれませんがこの程度は協力してもらいましょう」
キャゼルヌ大佐が溜息を吐いた。
「狸と狐の化かしあいだな……」
全くだ。俺は黙って頷いた。


宇宙暦 792年 9月24日 後方勤務本部  ミハマ・サアヤ


昇進してしまいました。今日から私はミハマ・サアヤ中尉です。アルレスハイムの会戦の大勝利、帝国の陰謀を暴いた事がその理由だという事だけど私は何にもしていません。

戦闘をしたのは第四艦隊の人達でサイオキシン麻薬を見破ったのはヴァレンシュタイン中尉、いえ大尉。私は大尉の作るクッキーを食べお茶を飲んでいただけ……。出世ってこんな簡単なものなの?

アルレスハイムの会戦後、第四艦隊の人達の私達に対する態度は一変しました。それまでは全く無視だったのに、会戦以後はチラチラ見ながらこちらから声をかけようとすると避けようとします。そんな変な態度で終始しました。

ヴァレンシュタイン大尉はそんな周囲に全く無関心でした。毎日勉強とお菓子作り、そしてお茶。どう見ても有能な士官には見えません、やる気ゼロの落ちこぼれ士官です。そんな大尉と一緒にお茶を飲んでいた私は色気より食い気の新米士官、駄目駄目コンビです。

士官学校を卒業し少尉に任官すると一年後には自動的に中尉になります。いわゆる万歳昇進ですが、私はその前に昇進しました。これって凄いアドバンテージなのです。今後のキャリアで誰かと昇進で競い合う事になった時、自力で中尉に昇進した、少尉任官後一年以内で功績を立てたとして優遇されます。

士官学校の同期生からも一杯メールが来ました。皆から“おめでとう、サアヤ”、“やったね、サアヤ”ってたくさん来ました、嬉しかった。ヴァレンシュタイン大尉はそういう事ってないんだろうな。ちょっと可哀想、だから私がメールを送ってあげました。次の日、大尉がちょっと恥ずかしそうに“有難う”と言ってきました。そうしていれば、可愛いのに。

大尉はハイネセンに戻ってからは大変忙しい日々を送っています。毎日のように軍の広報課に頼まれマスコミのインタビ
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