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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五話 パンドラ文書
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分からない……」
「知りたくもない……」
首を振りつつ大佐が呟く。陰々滅々、そんな言葉が頭に浮かんだ。

「大佐のほうは大丈夫だったんですか?」
俺の言葉にキャゼルヌ大佐は“なんとかな”と頷いた。
「ヴァンフリート4=2の件をヴァレンシュタイン中尉が知っていた、一昨日の情報部からの通知で情報源は俺じゃないかと最初疑われた」

「それで?」
「だが俺は中尉と話すときはミハマ少尉を必ず同席させていたし、彼がスパイの可能性があると知っていたからな……。俺が漏らした可能性は先ず無いと判断されたよ、ミハマ少尉には感謝している」
思わず安堵の溜息が出た。

「それを聞いて安心しましたよ」
「問題は俺以外に機密を漏らした人間が居た事だ」
「……」

「“君だけに話すんだが”、そんな事を言って機密を漏らした馬鹿が三人居た。他にも似たような例があるんじゃないかと密かに調査が行なわれている」
なるほど、部屋に入った時ピリピリした感じがしたのはその所為か……。

「そいつらは次の異動で左遷だ、まあ当然の処置ではあるが……」
少しの間沈黙が落ちた。おそらく大佐は左遷される人間たちの事を思ったのかもしれない。“君だけに話すんだが”、この特権を使用する優越感はかなりのものだ。大佐だって一度ぐらいはそんな経験が有るのかもしれない。

「大佐、ヴァレンシュタイン中尉はヴァンフリート4=2の件を自分で調べたと言っていますが……」
俺の言葉にキャゼルヌ大佐が頷いた。

「彼のデータへのアクセス記録を調べた。此処へ配属されてから一週間ほどでヴァンフリート4=2の事を調べている。いささか早すぎるのが気になるが事実だ。それとかなりあっさりとヴァンフリート4=2で基地を建設していると見破っているな」

僅かに考え込むような表情をした。何処となく面白くなさそうに見える、あるいは輸送計画にはキャゼルヌ大佐も関わったのかもしれない。だとしたら確かに面白くは無いだろう。

「有り得るのですか、そんな事が。配属されて一週間でしょう?」
「いささか腑に落ちんが有り得るのだろうな」
「……大佐、見ていただきたいものが有ります」
「?」

俺はキャゼルヌ大佐に持ってきた報告書を差し出した。A4用紙で五枚程度の報告書だ。大佐は受け取る事無く報告書を見ている。
「これは?」

「ミハマ少尉がアルレスハイム会戦後に送ってきたものです。通称”ミハマレポート”、もっとも情報部では”パンドラ文書”と呼ばれています。」
「パンドラ文書?」

「読んでいただければ分かります。いや、大佐には読んでもらわなければなりません」
俺の言葉にキャゼルヌ大佐は幾分訝しげな表情を見せたが、報告書を受け取って読み始めた。

読み進むにつれて大佐の顔が強張る、手が
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