60部分:ターラの花その五
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ターラの花その五
「良いか、上手くいけば富だけでなくターラも我等が手中に入る。気を引き締めていくのだぞ」
トラバント王は後ろに控える二人の方を向き言った。
「父上、ターラの民は如何致します?」
アルテナが王に問うた。
「決まっておる、従うなら良し、逆らうなら皆殺しだ」
王は平然と言い放った。
「しかし父上、それでは世の者がまた父上を・・・・・・」
「フン、それがどうした」
王は傲然と言い放った。
「世の者共が何を言おうと何と思おうと知った事か。奇麗事を言う暇があったら槍の練習でもしておればよいのだ」
「ですが父上、近頃諸国は傭兵として来た我等の掠奪を警戒して監視を付けるようになっております。いささかやり方を考えるべきかと」
アリオーンも父王を窘める様に言った。だが王はそれを聞き入れようとしない。
「アリオーン、だから御前は甘いというのだ。そんなものは無視すればよい。大体傭兵を雇っておいて何を言っているのだ」
王はさらに続ける。
「アリオーン、アルテナ、御前達二人はトラキア統一の為にわしの両腕となるのだぞ。そんな事でどうするのだ」
「・・・申し訳ありません」
「浅慮でした」
二人は答えた。王は二人に言った。
「良いか、明日からターラ及びフリージ軍への工作を強化する。そして斥候をより広範囲に出すぞ。それ等の指揮は御前等が執れ」
「はっ!」
二人は敬礼し天幕を出た。既に夜となっていた。篝火の中二人は見回りの兵士達の敬礼を受けながら陣の中を歩いていた。アルテナはふとアリオーンに話し掛けた。
「・・・・・・兄上、どう思われます?」
「何がだ?」
少し眉を顰めるアルテナに対しアリオーンはあえて表情を消して言った。
「父上のお考えです」
「父上の?」
「はい。父上は手段を選ばれず武器を持たぬ者達でも容赦無く手にかけられます。これは武人として間違っているのではないでしょうか?」
「アルテナ」
表情が厳しいものになる。
「は、はい」
アルテナも思いもよらぬ兄の厳しい表情と声に少し困惑した。
「御前は父上の御本意が解っていない」
「父上の・・・・・・。それは・・・・・・」
「いずれ解る時が来るだろう。いずれな。だが御前はその時・・・・・・」
「その時?」
アリオーンの表情は次第に暗くなっていったがアルテナの言葉に彼は表情を元に戻した。だがそれは無理に戻したようだった。
「・・・・・・いや、何でもない」
「はい・・・・・・」
何かある、と感じたがアルテナはそれ以上聞かなかった。
「もう夜も遅い。今夜は休もう。明日から激務が待っているぞ」
「はい」
アルテナは敬礼し自身の天幕に向かった。アリオーンはその後ろ姿を見ながらポツリと呟いた。
「因果は巡る、か。血は争え
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