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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第52話『2匹の鬼』
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両手に、膨大な魔力が集まっていくのをヒョウは見た。
すかさずヒョウは構える。これを凌げば、きっと隙が生まれるだろう。


「はァァァァッ!!」

「ッ!!」


・・・と、達観していたのも束の間、ユヅキの魔力が際限なく上昇し続けるのを見て、ヒョウはすぐさま氷の壁を幾層にも張った。

まさかアレは、全魔力ではないだろうか?
そんなものを体外へ放ったら、魔力切れでぶっ倒れるのがオチだ。もし防がれれば、ユヅキの勝機は完全に潰えるだろう。
それなのにそれを放とうとするということは、やはりあの少年が原因だろうか。


──そこまでして守りたいのか。


ヒョウには、守りたいなどと思える人はいないし、そもそも作ろうとも思わない。その存在が足枷になる可能性があるからだ。


──ならなぜ、目の前のユヅキを「カッコいい」と思う自分がいるのだろうか。


「穿てッ! “激浪霜(げきろうそう)”!!」


ユヅキの周囲に無数の鋭い氷の礫が浮かび上がったのが、氷壁ごしに見えた。来る、とヒョウは身構える。

しかしそれらが放たれた刹那、氷壁が跡形もなく砕け散っていった。
それだけではない。集中砲火の形で、礫たちがヒョウを狙い撃つ。

急いで新しく氷壁を造ろうとするも、礫がヒョウを襲う方が早かった。
皮膚を抉られ、血は飛び散り、白かった髪や肌が斑だが紅に染まっていく。いつの間にか角も折られ、力が急激に抜けていくのを感じた。


「う、あぁぁ……!!」







静寂が訪れたのは、それからすぐのことだった。小鳥のさえずり1つさえ聴こえない、まるで真空にいるかの様な静けさである。

顔を上げると、山のように積み重なった氷の礫が見えた。それは、ガラクタの様に変貌した街の風景の中で、一際目立つ淡い輝きを放っている。


「これで……」


直立できていたのも束の間、ユヅキは地面に正面から倒れ込んだ。その額にもう角はない。指先すら動かす気にならないほど、今の彼女は疲弊していた。
あの技を使うのに、自分の持つ全ての魔力を使ったのだ。しばらく、動けるようにはならないだろう。


「勝ったよ…ハルト…」


ユヅキは独り言のように呟いた。
そういえば、晴登とミライは大丈夫だろうか。
戦闘中は一切考えないようにしていたから、正直巻き込まれていても不思議じゃない。
しかし捜そうにも、もう立つ力はない。今できることは、地面に伏せながら無事を願うことぐらいしか・・・


──ガラッ


不意に静寂を切り裂いた甲高く固い音。ユヅキには、それは不幸の知らせに思えた。
この辺りでその音を鳴らせるのは、目の前の氷の山だけなのだ。つまり・・・


「まだボクは……負
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