第52話『2匹の鬼』
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──違う。さっきと大違いだ。
「ふッ!」
「うッ!?」
その違いは感覚的で説明しにくいが、
「そりゃ!」
「がッ!!」
1つだけ言えるのが、攻撃が──見えない。
「なん、で…いきなり…?!」
顔、腹を殴打され、若干頭がクラクラする。
口から血が垂れるほどの、容赦ないパンチだった。
…なぜだ。なぜ、さっきまで見えていた攻撃が急に見えなくなったのだ?
「…そうだね。強いて言えば、吹っ切れたから、かな」
「吹っ切れた…?」
「ボクにはやるべきことがある。ただそれだけだよ」
何を言っているのか、いまいち要領を得ない。彼女は何を悩んでいたというのだ。
「……でも、ここまで殴られて黙っちゃいられないね」
しかし、きっと自分には関係のない話だ。
自分にだってやるべきことがある。大陸の王になれば、鬼族というだけで周囲から蔑まれずに済むのだ。
先程ユヅキが言っていたことは間違いではない。鬼族であるだけで、自分たちは人から敬遠されていた。
だから人間の上に立てば、そんなことは無くなると信じている。
「この想いだけは譲れない!」
「うッ…!」
ヒョウの猛吹雪を真っ向から喰らい、ユヅキの怒涛のラッシュが中断する。いや、それだけに留まらず、ヒョウの反撃が始まった。
「貫けッ! "氷槍一閃"!」
「…ッ!」
1mにもなるであろう長い氷槍。
しかし、もはや殺す勢いで放たれたそれだったが、ユヅキに破壊されてしまう。
連続で生成して放ってみるも、結果は変わらない。
やはり、人間を相手取っていた時よりも、攻撃が通りにくい。
「焦れったいなァ、もう!」
遠距離では決着がつかない。
そう察したヒョウは先程のユヅキみたいに、距離を詰めようと図る。
双方の鬼が互いに互いを見据え、拳を構える。
「「はァッ!!」」
拳がぶつかり合って魔力が迸り、辺りで氷柱が猛烈な勢いで地面からつき出てくる。おかげで、綺麗に整備されてる石造りの道路もめくれ上がり、足の踏み場もないくらいに礫が散乱した。
それだけではなく、強大な魔力がぶつかった影響による衝撃波で、周囲の家々の窓ガラスが割れ、壁が吹き飛び、原型を留めないくらいに全壊していく。
しかし──
「…やっぱ、一筋縄じゃいかないね」
「…はた迷惑な話だ」
2匹の鬼だけは、立ち続けていた。
瓦礫を踏みしめ、再び彼らは対峙する。
「これ以上街を自分の手で壊したくはない。そろそろ決めさせてもらうよ」
そう言ったユヅキの
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