第52話『2匹の鬼』
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ヅキは氷剣を空気中に還すと、即座に近距離のままヒョウに向けて吹雪を放った。
滝を真正面から受けるような迫力と威力。いくら氷属性に耐性がある白鬼だろうと、圧されざるを得ないだろう。
「格の差を教えてあげようかなァ!」
「ッ!?」
しかし実力の差か、ユヅキの吹雪はあっさりと打ち破られる。白かった視界が開け、代わりにヒョウが眼前にいた。
驚くユヅキを尻目に、ヒョウの指は彼女の角へと伸びた。
「うらァ!」
だがユヅキは近づいてくるヒョウに、逆に鉄拳を放つ。
いつまでも逃げていられない。どんな時もチャンスに変えてやらねば。
「ちッ!」
さすがのヒョウも、その攻撃を防がざるを得ない。伸ばしていた手でユヅキの拳を掴み取る。
「はぁッ!」
「ッ!?」
すかさず、左脚で蹴りを放つ。しかし、ヒョウは驚く様子こそ見せるものの、しっかりと腕で防御していた。
「くッ…!」
一旦、ユヅキは体勢を立て直すために、バックステップして距離を置く。
「中々決まらないなぁ…」
思わず嘆息するユヅキ。
今は鬼化し、身体中から力が湧いてきている。だがそれでも、ヒョウの力の方が上回っているのだ。
果敢に挑んではいるが、反撃をされると正直危うい。
「ハルト……」
ユヅキは後ろをチラリと見やる。
そこには、倒れて治療中のミライと共に、グッタリとしている晴登の姿があった。
自分と同様に路地裏に運ぼうとしたが、ミライと一緒にいた方が良いと考え直した結果である。
「よそ見してる暇、ないと思うけど?」
「忠告ありがとう。別に攻撃して来てもいいんだよ?」
「そんな姑息な手は取らないよ。正々堂々戦って負かしてこそ、ボクは王となれる」
その言葉を聞き、ようやくユヅキはヒョウが攻撃を中断する理由を知った。それと同時に、初めて弟についてあることを知った。
……意外と、誠実なのか。
そう考え直したところで、今さら姉弟の溝は埋まらないことはわかってる。
人間と鬼族。それらの対立を生んだヒョウは、もう人間と、そして姉とはわかり合えないはずだ。
「残念…だよ」
初めて弟の存在を知った時は、驚きがあって、若干の嬉しさがあった。もう1人、自分を理解してくれる人がいるのかと。
でも、弟は決して良い立場にはいなかった。どう取り繕っても、王都を絶望に陥れた事実は変わらない。それは、歴史に残るほどの大犯罪である。
もう、彼とは“姉弟”でいられない。
お別れ…しないと。
「…いくよ!」
「学習能力がないのかい? そんなんじゃいつまで経ってもボクに攻撃は──ん?」
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