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第八十二話 要塞対要塞です。
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れに怯えることもまた忌むべきことだと思うが。」
フィオーナもティアナも内心感嘆のと息を吐いていた。これだからこそ、この二人は帝国軍の双璧と言われるのだ。自分たちも前世では双璧と言われていたが、やはりこの人たちには敵わないと思うばかりだった。
「ロイエンタール提督、ミッターマイヤー提督、感謝いたします。お二人がいてくださらなかったら、私たちは委縮して敵に乗じられていたかもしれません。」
「まだ終わっていないぞ。フロイレイン・フィオーナ。戦いはこれからだ。その言葉は後日いただくとして、今は作戦に集中しようではないか。」
ロイエンタールの言葉にうなずきを返したフィオーナはティアナとうなずき合うと直ちにその場で戦術会議を開催した。いわゆるスタンディング・ミーティングというやつである。何しろこの瞬間にも要塞は動いている。時間は待ってはくれないのだから。
* * * * *
要塞同士の砲撃戦が終了した後、ティファニーから合間を縫っての極低周波通信で戦闘詳報を聞いたシャロンは途端に微笑を消した。
「イゼルローン要塞が移動要塞に変わっていたとは知らなかったわ。こちらの主砲が使えないという事態になろうとは想定外だった。」
『はい。敵に一矢報われた格好です。』
「そんな悠長なことを言っている場合かしら?」
『は!?』
ティファニーが固まる。それに冷淡な視線を向けながら、
「このままの状態で時を過ごすほど敵が甘いとでも思っているの?すぐに要塞の臨戦態勢を整えさせなさい。敵はそちらに強襲揚陸してくるわよ。」
『まさか!?・・・あ、いえ、はい!すぐに指令します!!』
あわただしくティファニーがディスプレイ向こうでそう言ったかと思うと、通信が切られてしまった。
「情けない。敵の切り返す手を一手、二手先まで読めないようではこの先思いやられるわ。」
シャロンはひとり呟いた。イーリス作戦は開幕式から思わぬ苦戦を強いられているようだった。
「アンジェ。」
シャロンはすぐに別回線に極低周波通信を入れた。
「かねてから接触させていた工作員にプランBの発動準備をさせなさい。」
『Bですか?しかし・・・まだ、早すぎるのでは――。』
「イゼルローン方面の足が止まったのよ。こう着状態になりそうなの。ヤン・ウェンリーがいるとはいえ、敵の切り返した手も早い。何よりももっとも腹立たしいことはあのイゼルローン要塞を破壊するのではなく、欲を出して占領しろという指示が出先に飛んでいたということだけれど。」
『まさか!?あれほど徹底させていたはずでは――。』
「発案者は統合作戦本部長でも宇宙艦隊司令長官でもないわ。国防委員長よ。そしてその背後には最高評議会議長もいるでしょうね。余計なことをしてくれたわ。この自由惑星同盟の政治家にはよほど愚か者の遺伝子が濃く伝わってい
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