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第八十二話 要塞対要塞です。
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隻が要塞後方に待機している。下手に撃ちあいになって巻き込まれたらたまらないというわけだ。

他方、同盟軍はいち早く艦隊を展開し、アーレ・ハイネセンを稼働せしめていた。ヤン・ウェンリーとしては、自由惑星同盟の大攻勢そのものにも反対で有れば、この要塞をもってイゼルローン要塞を攻略することも反対であったが、第十七艦隊の司令官となっている以上上層部の意見には従うほかなかった。
「ふぅ〜・・・。」
ヤンは頭を掻いた。だが、幕僚たちが彼を見つめているのに気が付くと、椅子を回転させて向き直った。土壇場になって妙な命令が飛び込んできたので、それを咀嚼するのに少々苦しんでいたのである。それはウィトゲンシュティン中将の方でも同じことらしかったが、会議の結果既定路線を継続する方向で話は進んだ。
「労せずしてあの要塞が奪取できるのであれば御偉方がやってみればいいのよ!!」
と、机をたたきまくって叫んでいたウィトゲンシュティン中将の姿を思い返しながら、
「実は先ほどウィトゲンシュティン中将から司令官クラスの会議が緊急招集された。国防委員長から妙な命令が出ているというんだ。要塞を破壊せよ、というのが大本方針だけれど、可能であれば要塞を制圧しこれを占拠せよ、というんだ。」
ヤンは皆を見まわして言ったのである。皆の表情はヤンが予期していた通りだった。唖然と呼ぶべき表情が一様に並んでいた。
「それでは、これまでのイゼルローン攻防戦と同じことをせよ、というのですか?」
きっかり5秒が経過した後に、ムライが尋ねる。
「まぁ、あれだけの要塞だ。破壊せずに制圧できればそれに越したことはないという事だろうね。」
「ですが閣下。これまでの5度の攻防戦で甚大な被害を出しているにもかかわらず、まだ要塞を制圧しようというのですか、それは少々無茶ではないですか?」
パトリチェフ准将が不満そうに尋ねる。
「方法とやり方によっては。」
ヤンは無造作にそう言ったので、居並ぶ幕僚たちはポカンとした顔をした。



* * * * *
「敵の旗艦の識別番号から見て、敵の艦隊の司令官の陣容は以下の通りだそうです。」
データベースから照合を終えた報告をもってシアーナ・フォン・ルクレール少佐が4大将とケンプ司令官にそれを見せに来た。受け取ったティアナがそれを読み上げる。
「第十六艦隊のティファニー、ま、これは予想通りか。で、次が第十三艦隊のクリスティーネ、そして・・・・。」
最後の氏名の項でティアナの声が止まった。
「第十七艦隊のヤン・ウェンリー。」
フィオーナがティアナを見返す。親友の顔は心底嫌そうな顔になっていた。騎士士官学校候補生時代に実戦トーナメントで当たりたくもない嫌いな人間にあたった時の顔を思い出させた。
「ええ!?ヤン・ウェンリーが来るっていうの?おとなしくハイ
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