59部分:ターラの花その四
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ターラの花その四
竜騎士団の歓声に包まれ三頭の竜が大地に降り立った。
最初に降り立ったのは長い赤茶色の髪を風にたなびかせた背の高い女騎士だった。茶の瞳を持ち燃える様な唇を持つ大人びた美しい顔立ちである。赤い軍服に白いズボンと漆黒のブーツ、そして白マントを身に着けている。
次に降りてきたのは長く豊かな茶色の髪と黒の瞳を持つ端正で涼しげな顔立ちの青年である。深い青の軍服に同じ色のズボンを着、濃灰のマントを羽織っている。ブーツは軍服と同じ色である。引き締まった長身の持ち主である。
最後は濃緑色の長髪に切れ長の黒い瞳を持つ長身の壮年の男である。濃い緑の軍服とズボン、こげ茶のズボンを身に纏い、くすんだ赤のマントを羽織っている。その左手には塚に豪奢な装飾が為され刃の両端には円月状の刃が取り付けられた槍がある。これこそトラキア王家に伝わる十二神器の一つ天槍グングニルである。それを手にする者は一人しかいない。そう、彼こそユグドラル大陸にその悪名を轟かせている竜王トラバントその人であった。
『トラキアの南には野獣が棲んでいる』
大陸の者は言う。それはトラバント王の事を指しているのは言うまでもない。その軍略と武勇はかって聖戦で活躍しトラキア王国の祖となった十二聖戦士の一人竜騎士ダインに勝るとも劣らないと言われている。だがダインが神格化すらされているのに対しトラバント王のそれは悪名と呪詛ばかりであった。
その理由はトラバント王のやり方にあった。彼は勝利の為には手段を選ばず平然と相手を欺き陥れてきた。非戦闘員、女子供、老人問わず手にかけた。各地で戦乱が起こると傭兵として介入し戦利品と称し掠奪の限りを尽くした。
仲でもレンスター軍との間で行なわれた『イードの戦い』はトラバント王の悪名を大陸全土に知らしめる事となった。戦いの前の年にレンスターとの間に不戦条約を結んでいたにもかかわらずイード砂漠盟友シグルド公子の援軍に向かうべく妻エスリン王女と共に槍騎士団を率い北上キュアン王子を条約を反故にし急襲した。エスリン王女はトラバント王に殺され連れていた愛娘アルテナ王女を奪われた。娘の命を楯にトラバント王は要求した。死ね、と。
娘を楯に取られたキュアンはゲイボルグを棄てグングニルに胸を貫かれた。精鋭槍騎士団は一人残らず戦死しアルテナ王女はトラバント王により放り投げられグングニルで刺されたと言われている。
この卑劣極まる行いに皆口々にトラキアを批難した。粗暴で知られたダナン公子や冷徹なブルーム公子、帝国の実権を掌握していたアルヴィス公でさえ露骨に嫌悪感を示し批判した。
だがトラバント王はそれに一切構わずレンスター侵攻を開始した。マンスター宰相 グスタフ候、コノート将軍レイドリック男爵等の内応を誘い例によって奸計でレンスター王カルフとレンスター、コ
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