暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
砲火
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ってくるその陣形の中、ガルムの背を離れ、一人飛翔したヒスイは全体を俯瞰する。

影妖精(スプリガン)の首都《シナル》

島国で面積が限られているフリーリアと比較すると、家屋の類が驚くほどまばらだ。少々語弊があるかもしれないが、都会と農村くらいの差があるかもしれない。

その家々だとて、これといった特徴もない。牧歌的、としか表現しようのないものだ。

だが、それらがあって余りあるほどの存在感を放つ建物が、そこにはあった。

ピラミッド。

いや、現実世界でのピラミッドで連想するギザのピラミッドのように綺麗な四角錐ではなく、先端が欠け落ちた台形型という事はシュメールなどにあったとされるジッグラトのほうが妥当か。

赤褐色の馬鹿デカい煉瓦で構成されたジッグラトが、松明の温かみのある灯りで夜闇の中浮かび上がる様は中々に壮観だ。

ピラミッドから、あるいは家々から、天に打ちあがった宣戦布告の証を見、わらわらとまばらに人影が出てくるのが見える。

困惑から混乱に移ろっていく彼らの顔を存分に見た後、ヒスイは魔法の起句を怜悧に唱え始めた。

発動するのは、単純な拡声呪文。

スペルを唱え終え、魔法が発動したのを確認した女性はそのまま口を開く。

「あっあー。こちらケットシー連合軍、ケットシー連合軍。ちょっとあてらにケンカ売ったバカども、出向いてやったんやから、とっとと出頭せぇー。今ならセンセー怒らへんでー……ま、嘘やけど」

何とも間の抜けた脅迫文。

実際、フェンリル隊やドラグーン隊の陣列からは失笑が漏れ聞こえる。

だが、これだけの戦力を目の前に置かれた状況で言われたら、相当な心的圧迫を与えるはずだ。軽薄な口調とは裏腹に、酷薄な視線で下界を睥睨する狐耳の女性は薄く息を吸う。

「繰り返し言うで。……とっとと出て来いバカ野郎ども」

その凛とした声が、隅々まで響き渡る。

なまじ激昂していないだけに、底知れない迫力が伴っていた。

そして、『繰り返し』とは名ばかりの最後通告。《黒幕》が出てきたのも、当然だろう。

「……大人しゅう出て来たか」

寒風になびく紅色の髪を軽く払いながら、ヒスイは言った。

来たのは初めてだが、首都に必ずある領事館がどの建築物かは言われなくとも分かる。普通、種族の首都といえば領内にある圏内村とは違い、イベントホールや死に戻り地点が入っているセーブポイントなど、領事館に負けず劣らずの建物が多いが、この都市に至ってはそんな間違いも起きないだろう。

その他の建物全てがどうでもいい。この塔さえあれば良いと言わんばかりの存在感を放つジックラド。

その正面入り口。今にも動き出しそうな(というか有事の際は絶対動く)門番石像の間を縫うように、一人のスプリガンが姿
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