その勇気は何処に在る
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がまだまだチビだった頃に助けてやっただろ。そん時に知ったのさ。強くなりてぇって目をしてやがるから、つい名前を知りたくなっちまってな」
その言葉に、彼は自分に──エルに、興味があったということを知った。
だが、そんなものはどうでもよかった。
それよりも、どうしても聞きたいことがあった。
今まで隠れていたその想いが、外面に曝け出される。
意図せず言葉が紡がれる。
背中しか見せることなく、去って行ってしまった存在への、多大なる感謝ではない。
その存在に対して感謝の一言も言えなかった物足りなさと、振り向かせることもできない、己の弱さへの、未熟さへの恥でもない。
今、自分がその立場にいるからこそ姿を現した疑問。
「どうしてあの時……僕に協力してくれたんですか──」
そう聞くと、彼はこれまたニヤリと笑って言う。
「んなもん、初心者の喜んだ顔が見たいからに決まってんだろ。俺が初めて魔剣を持った時、あーして自分を助けてくれた奴が居たのさ。
それじゃ、な」
「い、いや、待ってくれ、おい……」
彼は言うだけ言って、またすぐに去ってしまった。
「笑顔が見たい……? 訳分かんね……何が言いたいんだよ……何が……」
答えは、見つからなかった。
くそ、と漏らしそうになる。
そんな時、あまりに予想だにしない声が、鼓膜を震わせた。
「前しか見ていない」
もう存在しないはずのメリクを幻視する。だが、その言葉を発したのは当然ながらメリクではない。
じゃあ、誰なんだ。そうしてその姿を捉える。
ルーンブレード。
……記憶がなくなったはずの、ルーンブレードからだった。
「は……? ルーンブレード、それって……?」
「え? あ、あれ……? なんでだろ……なんだか、突然この言葉が頭の中に浮かんできて……」
「あ、私も同じこと思い浮かんだ! ルーンブレードも同じなの?」
「うん……でも、なんで……?」
なんで記憶が蘇ったのか。
そんなものは分かりはしないけれど、でも、一つだけ分かったことがあった。
これなら、メリクに償えると。
きっと、あの死は無駄じゃない。
いや違う。きっとじゃない。絶対に、だ。
絶対に、あの死は無駄じゃない。
今になって気付くなんて、馬鹿みたいだ。
「なぁ、ブロードソード、ルーンブレード」
「うん?」
「どうしたの、マスター」
「俺さ────────」
願いを、言葉に。
そうすれば、叶うような気がしたから。
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