その勇気は何処に在る
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一週間、たっぷりと涙を流し続けた。
その涙は心に入ったヒビに入り込み、じくり、じくりと痛みを与え続けた。
涙は、傷口に塩を塗るかのような、そんな存在だった。
◇
250
いつしか、憧れの存在の背中に追いついていた。
だが、それまでの過程が、上手く思い出せない。最後の記憶は、ジャンヌとの死闘。
オラトリオのソウルを纏い、日々の鍛錬を止め、堕落に身を任せ、そうして生きていた。
時折、思い立っては初心者の前に行き、彼らを支援する。
そして敵を倒せば、すぐに去る。
ありがとうの言葉を、聞きたくなかった。
上を目指したが故に失った最高の友。その原因はなんの否定もすることが出来ないほどに、己にある。
自分が上に行きたいと言ったが故に、メリクを死に追いやった。
だからこそ、もう、ありがとうは懲り懲りだった。
それに、これは偽善だということも、よく理解している。
救えなかった友人への償いとして、ありもしない善の心で初心者に接してしまっている。
これがいけないことだと理解しながらも、だが止めることはない。
隣には、極二となったブロードソードと、ルーンブレードがいる。
本来なら、一人につき使える魔剣は一つだと聞いた。だが、何が原因なのか、ルーンブレードもアンロックすることが出来てしまった。
だが二人は、メリクの存在を知らない。覚えていない。
だからこそ、この偽善は止まらない。二人の言葉の端々から、過去の自分の嫌な部分を思い出してしまう。
どうすればいい、メリク──。
この言葉を聞いたら、きっと怒るだろうな。
そう思いながら、だがもう、涙の一粒も流れなかった。
◇
264
そんなある日、珍しい存在が魔闘王になったと話題になった。
どうせ新参が頑張って上位に食い込んだだけだろうと、思った。噂には尾鰭が付き物で、特に魔界では尾鰭の付き方が突飛だったりする。
魔界統一戦関係の噂は、特に。
だから、それを知りたくなる。
ただ単に興味本位で、その者の顔を見てやろうとした。
──そこに居たのは、かつての自分が追い求めた背中だった。
あの時、感謝の一言も言えないまま去って行った、あの背中がそこにはあった。
その男は、自分を見つけると、ニヤリと笑った。
「お前さんが、エル、か」
どうして、名前を知っているんだと、聞き返したくなる。あの時、自分は名乗っていないのに。
どうやらそれを察してくれたらしく、すぐに言葉を続ける。
「いつだったかねぇ。お前さん
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