その勇気は何処に在る
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隣を走る者も一人、また一人と減っていく。
寂しさが生まれ始めたのは、五つ目の壁を乗り越え、空を仰いだ時だった。
彼を称賛する声は、存在しなかった。
足りないと気付いた時には、遅かった。
005────────
友人が出来たのは、実は結構始めの頃だった。
「ランク二百を目指す……ね。その願い、俺も一緒に走らせてくれ」そう言って隣で笑った。
「飯でも食いに行こうや。休息こそが力の源ってね」そう言って手を引っ張った。
「強ぇ奴がユグドラシル付近に出てるらしいぜ。聖騎士型冥獣だとよ。力合わせて倒そう、そして知らしめてやろう、俺たちの強さを」
随分と気の合う友人だった。彼の魔剣として隣に居たのはルーンブレードで、ブロードソードと気が合っていた。それが原因とも言えるし、そもそもその友人の人柄が理由とも言える。
いや、その二つがあってこその、“気の合う友人”だったのかもしれない。
友人の名はメリク。
ちょうど同じ時期に魔剣使いとなったらしい。だからこそランクも近く、感覚的には競い合えるライバルの様な存在だった。
例えどこに行こうが、隣にはメリクがいた。
長い長い道の半ばでも。
高い高い崖の半ばでも。
いつでも変わらず隣に居てくれた。そして、時には励まし、時には怒り、時にはお互いの腕を組んだ。
気付いた頃には、俗に言う戦友にも近いものになっていた。
最高の相棒だった。
二人で戦えば負け知らずだった。
冥獣に囲まれようが、切り抜けられた。
「なぁ」
「んー? どうした」
「俺といて、辛くない、のか。面倒な奴だなとか、思わないのか」
そう聞くとメリクは、声を出して笑う。
「ばっか。思うわけないだろ? 最高の相棒なんだからよ。お前が目指す背中に追いつくまで、ぜってーに俺は隣に居る。約束だ」
そう言ってくれるメリクの事を、心の底から信頼した。
「……ありがとう」
陳腐な感謝の言葉しか、出てこない。それ程に、メリクは最高の相棒であり、戦友であり、親友であり──。
きっとそれを言葉で言い表すことは、決してできない。
だからこそ、陳腐な『ありがとう』に全ての思いを詰め込んだ。
「急にどうした、らしくない。お前は前しか向かない奴だろ? ずっと前だけ向いていれば、いい。それがお前らしいし、そうじゃなかったなら、俺だってお前に着いて行くと決めたかは分からんしな」
いつだって、隣に俺がいる。
そう、確信出来るほどの強い口調だった。
それを聞いていたブロードソードとルーンブレードは二人して笑った。
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