第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#49
FAREWELL CAUSATION\〜Abstinence Paradox〜
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、怖いよ、寂しいよ、――さん
徐々に、虚ろになっていく少女の姿、最愛の者に注がれる存在
ずっと、傍にいるから、お兄様の中で私は生き続けるから、
だから、大丈夫だよね? 私、間違ってないよね?
スベテを託して逝き、ソレを受け継いだ者が、やがて大いなる未来を切り拓く。
悠久の時の中、連綿と紡がれてきた人の営み。
ソレは生まれた時から少女の裡に、『愛染他』 の名と共に。
特殊な 『能力』 ではない、技巧を極めた法儀でもない、
水が水で在るように、空が空で在るように、
ただ当たり前に存在していた少女の宿命。
ソレは恐るべき “魔物” を生み出す、最高の生け贄と成るであろう。
相乗効果で増大した波紋が何倍にも膨れ上がるように、
受け継がれた回転が次元の壁すら撃ち砕くように、
元々の殺戮能力を遥かに凌駕した力に加え
ティリエルの術式までも自在に遣えるようになった
最強の徒、ソラトの誕生を意味する。
ただ自分だけのモノと考えているなら、生命に価値は無い。
いずれは尽きる、いずれは終わる、その意味も解らないまま。
では何のために生きているのか? 何のために存在しているのか?
その解答の一端が、少女の存在を透して顕わになる。
“ソノ時に、抱きとめてくれる人がいますか?”
存在力の大半を注ぎ込み、
最早その姿も蜃気楼のように見え隠れする少女の生命が、
糸の切れたマリオネットのように崩れ落ちる躰が、鋼の爪に受け止められた。
『GU……GU……』
獅子は完全なる復活を遂げていた。
元より、外殻が砕けただけで内部のソラト本体に
致命的なダメージはイッていない、
回復に削がれない分より力は増強されるというべきであろう。
運も彼に味方した、強者は戦闘のみではなくあらゆる面で優れている。
「お、兄、さま……わた、しの……わたし、の……」
消え出ずる愛妹の手が、獅子の風貌を撫でた、逃れようのない死を前に。
少女は、安らかな表情を浮かべていた。
此処に至るまで、一体どれだけの覚悟が必要だっただろう。
どれほどの恐怖を乗り越えなければならなかっただろう。
一朝一夕、その場の状況で出来るコトではない。
死と定められた 『運命』 それを享受し
幾度幾度も終焉を追想しなければ到達出来ない領域。
正義も悪も無かった。ただ、尊いのだ。
絶望に屈する事無く、痛みを抱いて前に進む事が出来る者は。
人間だろうと、そうでなかろうと、
生命は、終わりと共に別れと共に、
未来へ紡がれていくものだから。
「い、く……ひさ、しく……すこ、
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