栗でホワイトデーを・2
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現場からの声、って言えばいいかな?」
書類のタイトルは《当鎮守府に於ける演習の効率減少に対する陳情》である。
ウチの鎮守府は規模・戦力・錬度共に南西海域に存在する鎮守府の中では一番だと自負している。よって、良くも悪くも演習というのは『相手に合わせた』内容へと必然的に変化し、相手に経験を積ませる為の物と化してしまった。相撲や柔道でいう所の『胸を貸す』立場にしかなれなくなったのだ。
勿論、活きのいい艦隊ってのはどこにでもいるモンでウチに真っ向勝負を挑んでくる奴等もいた。……居るのではなく、居たのだ。過去には。その度にどこぞのモヒカン軍団よろしく砲雷撃しか出来ない連中に満面の笑みで襲い掛かる近接用の得物を持ったウチの艦娘達。その鬼気迫る姿は相手の艦娘にトラウマを与え、マトモにウチに挑んでくる艦隊は居なくなってしまったのだ。それこそ、同格の中将・大将クラスの艦隊と演習が組めればいいが、将官って奴は政治のコマにされやすい。というか、される。持ち場を離れて移動するだけで一大事なのだ。おいそれと演習が組める訳もない。そのせいで最近は艦隊内の味方同士での演習がメインになってしまっている。
だが、それもまた問題である。何せ相手は勝手知ったる身内。好む戦術、好まない戦術等の『クセ』が解ってしまう。相手の裏を掻いたり、苦手とする戦術ばかりで攻めてしまい、対応できる状況の幅が限られてしまうのである。ならば俺が鍛えようかと嬉々として出張っていくと、頼むから戻って書類を片付けていてくれ、日常的に地獄を見るのはイヤだ、とあからさまな拒絶をされる。何故だ。
要するに、何事も頑張りすぎたせいでどうにもならなくなってしまったのだ。
「あーあ、どっかに居ねぇかなぁ。ウチの連中とタメ張れるだけの戦力の相手」
まぁ、そんなのは俺の高望みだ。どうにか上手い手を考えてやるのも提督である俺の仕事だろう。
「さてと、ご馳走様でした。速吸はもう行きますね!」
「お、そうか?どうだったモンブランの味は」
「とっても美味しかったです!でも、私達の中には和菓子の方が好きな娘も多いので、選べると嬉しいかも知れません!」
成る程、和菓子か。ホワイトデーのお返しに和菓子はどうなんだと思い、自然と避けていたかもしれん。
「そっか、ありがとよ」
「いえいえ、それでは!」
にぱっ!と元気を振り撒くような笑顔を残して、速吸は去っていった。さてさて、栗の甘露煮を使った和菓子、作るとしますかね。そう考えた俺は残っていたコーヒーを飲み干し、腰を上げた。
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