栗でホワイトデーを・2
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載機を格納する余裕など存在するハズもなく、野晒しでただ載せただけという有り様。それでも無いよりはマシだと1943年のクリスマス、彼女は進水した。
瀬戸内海での訓練を終え、フィリピンへと向かった彼女を待ち受けたのは過酷な現実だった。6月11日に到着した2日後、アメリカ軍のサイパン島に対する艦砲射撃が始まったのだ。事態を重く見た海軍はあ号作戦を発令。属に言うマリアナ沖海戦である。速吸も補給部隊として参加。しかし作戦は大失敗に終わり、敗走する味方に給油を行って退却を開始。その途上でアメリカ軍の空襲を受けて損傷を受けるも、辛くも生存。呉に戻って修理を受けた後、再び派遣されたのもフィリピンに向けてであった。
8月10日、フィリピンに向けて出港するも悪天候に阻まれて思うように進めず、更には米潜水艦によるウルフパック(群狼戦術)によって包囲され、速吸を含む20隻の大船団『ヒ71船団』は送り届ける筈だった陸軍将兵7,000名の命と共に壊滅した。冬に進水し、翌年の夏に沈んだ彼女には秋の思い出が存在しない。そのせいか、秋の食べ物に人一倍思い入れがあるらしい。
「悪い事じゃねぇさ、人の好みなんざそれぞれだ」
そう言って頭をワシャワシャと撫でてやる。
俺も一服するかとコーヒーを二杯淹れ、灰皿と共に持ってソファに腰を下ろす。コーヒーを啜り、煙草をくわえて火を点ける。ぷかりと煙で輪を作りながら、とある書類に目を通す。
「休憩中もお仕事ですか?やっぱり大変なんですね、提督さんって」
むぐむぐとフォークをくわえたまま、速吸が喋っている。
「あのなぁ。俺だって一応大将だぞ?それなりに忙しいんだよ……ってか、普段お前らの目に俺はどう映ってるんだ?」
「えぇと……」
速吸は思案顔になりながら、指を折りつつ俺に対する印象を挙げはじめた。
「お料理が好きで、お酒も好きで、お仕事が嫌いで、おっぱいの大きい人が好きで、いつもお仕事サボろうとしてて、それでいつも大淀さんに怒られてるなぁって!」
「ぐふぅっ!」
言い返したい。しかし殆どが客観的事実過ぎて言い返せない俺がいる。物凄い笑顔で言い切る速吸もすげぇと思うが、これじゃあ俺がおっぱい好きの飲んだくれてるダメ親父のようじゃないか。何としても否定したい、特にダメ親父の部分を。
「そりゃ、お前らが海上にいる時が俺の仕事してる時間なんだからよ。俺の仕事してる姿なんざ見た事あるわけねぇだろ?」
「あ、それもそうですね!」
助かった、速吸がアホの娘(よく言えば素直)で助かった。ただ、もう少し真面目に仕事しよう……と密かに心に誓ったのは内緒だ。
「それで、何の書類を見てたんですか?」
「あ〜……何と言うか、ウチの抱えてる問題に関する
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