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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三話 弱いんです
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みます。そして少し小首を傾げて考える。ここ数日は小首を傾げる事が多いです。後方勤務本部の女性職員がカワイイと騒ぐのも無理は無いと思います。私だって抱きしめたくなるから。
バグダッシュ大尉がキャゼルヌ大佐の私室から出てきました。私の方を見ることも無くゆっくりとした足取りで通り過ぎてゆきます。此処に来た時も同様でした、面識などないかのように無視してキャゼルヌ大佐の私室に行きました。
私の事をキャゼルヌ大佐に話したのだろうか? 監視対象者から監視者だと見抜かれてしまった私……。なんて惨めなんでしょう。おそらくキャゼルヌ大佐にも私の事が伝わったはずです。大佐は私をどう思ったか……。
「ミハマ少尉、少し付き合っていただけますか?」
「は、はい」
ヴァレンシュタイン中尉は席を立つと外へと向かって歩き出しました。私もその後を追います。周囲の視線が私達に集まりました。
通路に出るとバグダッシュ大尉が私達に背を向けて歩いていました。中尉がにこやかに笑みを浮かべながら私を見ます。そして少し顔を寄せて小声で話しかけてきました。
「あの方が少尉の本当の上司ですか?」
「!」
思わず、中尉の顔をまじまじと見てしまいました。中尉はそんな私を悪戯な表情を浮かべおかしそうに見ています。そしてクスクスと笑い声を上げ始めました。あの時と一緒です、思わず背筋に悪寒が走りました。
「違います、そんな事は有りません」
小声で抗議しました。
「あの人は此処へ来た時も帰る時も私を見ようとはしなかった。此処へ来る人は皆私を一度は見るのにです」
「偶然です、おかしな事ではないでしょう」
そう、偶然で言い張らなくてはいけません。これ以上の失敗は許されないのです。ヴァレンシュタイン中尉が私の言葉に頷きました。ほっとした瞬間です、中尉の声が私の耳に入りました。
「そうですね、それだけならおかしなことでは有りません。ですがあの人がキャゼルヌ大佐の私室に入った時、行きも帰りも少尉は僅かに緊張していました。何故です?」
「……」
ヴァレンシュタイン中尉が私に微笑みかけてきます。周囲の視線が気になりました。通路を歩く人達が皆チラチラとこちらを見ています。仕事の打ち合わせと思っているでしょうか? とてもそうは見えないと思います、顔を寄せ合い小声で話し合っているのですから。
「今も通路に出ると貴女は彼の後姿を眼で追いました。……彼の名前を教えてください」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら中尉が答えを迫ってきます。バグダッシュ大尉、ヴァレンシュタイン中尉はサドです。私を追い詰め苛めて喜んでいます。そして私は抵抗できそうにありません……。
「……バグダッシュ大尉です」
「なるほど、バグダッシュ大尉ですか……」
ヴァレンシュタイン中尉は何度か頷いていま
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